大屋根リング構想
2025年日本国際博覧会基本計画。
事務総長の石毛博行が率いる万博協会が2020年12月25日、公表した。会場のデザインやパビリオンの配置、イベント、来場者の輸送など万博全体について網羅した計画だ。
このなかでは、万博の支出と収入の資金計画を示した。支出は大きく分けて二つ。一つが運営費で、809億円を見込んだ。スタッフの人件費、イベントの運営、会場の清掃などにあてる。入場券の売り上げで702億円、その他の収入(パビリオンの賃料やグッズ販売)で107億円をまかなうとした。
もう一つの支出が、会場建設費の1850億円。当初の1250億円から1・5倍(600億円増)にした。これが1度目の上ぶれだった。
増えた600億円の内訳は、暑さ対策などに約320億円、飲食店や物販施設などの整備に約110億円。そして、通路上の屋根の整備で約170億円とした。
屋根はもともとつくる考えがあり、1250億円のうち約180億円を見込んでいた。さらに約170億円を積んで設計を変え、計約350億円の屋根をつくることになった。
これが後に波紋を呼ぶ「大屋根リング」への設計変更だった。
この時は「えいや」の大ざっぱな計算ではなく、それぞれの施設にかかる金額を積み上げて算出した。
万博担当相の井上信治は基本計画の公表に先立って11日、大阪府知事の吉村洋文、大阪市長の松井一郎と市役所で会った。
井上は「可能な限り経費は削減する」と話した。増えた分の負担についても、国、府市、経済界で3等分にしたい考えを伝えた。
吉村はこう応じた。
「万博成功のためと理解しているが、(建設費)増加の話はこれで最後にしてほしい」
それから13日後。府市は基本計画に同意した。
松井は記者団に、強調した。
「万博を成功させるための投資。必要経費だ」
一方、府市の議会は前後して、政府に意見書を出した。再び上ぶれする事態になれば3等分のルールにこだわらず、「国が責任をもって対応すること」とし、増えたら国がすべて負担すべきだと求めた。