別の県議も情報を漏洩か

斎藤知事の疑惑には根拠があることが百条委の調査で選挙前には判明しており、Aさんの人間性を攻撃した記述も事実と違うため、文書の内容の流布は百条委内部情報の“情報漏洩”とは言えない。しかし、岸口氏が事実上認めている内容だけでも重大な問題をはらんでいると県関係者は指摘する。

「Aさんの尊厳を貶め、告発内容を調べる百条委メンバーへの攻撃をそそのかした文書が立花氏に渡されたことは、拡散を図る以外の目的はありません。その過程に当の百条委副委員長が関与していたとなれば、委員会だけでなく、県議会の信用もなくなります」(同関係者)

立花氏は昨年11月のYouTubeで、

「もう情報いらないんです。十分でしょ。もうここからは法律の解釈とか、あとは拡散していくことになっていきますので、どんどん拡散していく」

と発言。

選挙でその言葉を実行する中で、候補者ポスターを新たな内容のものに作り替えたりもしている。

その2枚目のポスターでは、

「実は、自殺した元県民局長(Aさん)は10年間で10名以上もの女性県職員と不適切な関係を結んでおり、不同意性交等罪が発覚することを恐れての自殺だと思われる」

などと根拠のない主張もしたが、これを立花氏は「岸口さんからの情報を基にこれは確信したので、ポスターを別バージョン作ったり」と発言している。

兵庫県知事選のポスター掲示板。左下が立花孝志氏のポスター 撮影/集英社オンライン
兵庫県知事選のポスター掲示板。左下が立花孝志氏のポスター 撮影/集英社オンライン

「岸口氏は維新県議団の団長も務めていましたが、昨年12月13日付で辞任しています。維新が知事選で斎藤氏以外の候補者に出馬を求め、その候補者が大敗したことなどの責任を取った、と維新関係者はメディアに説明していました。

しかし斎藤さんを応援していた立花さんに材料を提供したか、少なくともその場に居合わせた岸口氏の行動は、斎藤さんの支援を意味します。維新が事実上の自前候補を擁立した裏で、県議団のトップが斎藤さんを支援していたとそれば、それはどういった思惑だったのでしょうか」(地元メディア関係者)

昨年10月31日の知事選初日、斎藤元彦氏とは別の候補者の出陣式に姿を見えていた岸口実県議(右端) 撮影/集英社オンライン
昨年10月31日の知事選初日、斎藤元彦氏とは別の候補者の出陣式に姿を見えていた岸口実県議(右端) 撮影/集英社オンライン

斎藤知事の疑惑に絡んでは、秘密会で行なわれた昨年10月25日の百条委で片山元副知事が話した音声を録音したものが漏洩し、これも立花氏が入手し公開。立花氏は、この音声も岸口氏とは別の現職県議から入手したと説明してきた。

さらに立花氏はAさんの県公用パソコンに入っていた個人的なデータだとするファイルの一覧も選挙後に公開し、自身の情報収集力を誇示している。

個人情報はダダ洩れになり、根拠不明な怪文書がやり取りされる場には県議会調査委員会の副委員長が立ち会った――。情報の扱いでも、兵庫県と県議会への信頼は失われている。

兵庫県警本部(撮影/集英社オンライン)
兵庫県警本部(撮影/集英社オンライン)
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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班