将来は薬剤師になりたいワケ
そんな壮絶な人生を送ってきたみゆ氏だが、セクシー女優引退後の主な収入源は、動画配信。ファンたちが月額登録するサイトに動画をアップロードすることによって、生計を立てているのだという。必然的に動画編集のスキルが必要となる。
「こつこつ勉強して、動画編集を体得できました。こうした細かい作業が好きで、性に合っているんですよね。組織のなかで誰かに合わせて動くよりも、個人で発信するほうが生活がしやすいと感じています」
気になるのは、その収入。企画単体女優も経験した彼女の月収は相当な金額だったはず。みゆ氏は、「今のところですが」と前置きしたうえで、こう言った。
「ありがたいことにセクシー女優時代よりは、稼げていますね。個人で動画配信をするときは、だらだらした感じも“素人ゆえの味わい”みたいな好意的な目で見てくれるファンが多く、私自身が新しい魅力を発見した印象です」
だが同時に、「いつまでもこの生活をしようと思っているわけではありません」とも語る。
「将来は薬剤師になりたいと思っています。子宮外妊娠をしてしまったとき、生まれて初めて一週間ほどの入院を経験しました。自分の身体や人生がどうなってしまうのか、とても不安なときに、医療従事者の方々にとても励ましていただきました。
これまで私はいくつかの喪失体験がありました。それが原因でやる気になれず厭世的になったけれど、誰かの役に立てる人生が今からでも送れるなら、また挑戦してみようかなと思っています。
高校も中退して、大学も除籍になった私でも、自分が勉強した知識を生かして誰かに寄り添えるのだとしたら、そんな人生もいいなと最近は思っています」
※
みゆ氏は、悲しみを刺青として身体に纏うことで昇華し、人生の次のステージを自力で引き寄せようとした。失われたものはもとに戻らないが、彼女が歩みをやめない限り語り継ぐことはできる。時間はかかったが、奈落で勇気づけてくれた医療従事者たちへの恩返しの第一歩にいま、ようやく乗り出した。
取材・文/黒島暁生 写真/本人提供