記者会見に参加制限は必要?

中居正広氏に関連して発覚した社員の人権侵害疑惑に端を発するフジテレビの2回目の記者会見(1月27日)。質問者が記者クラブに限定された1回目(1月17日)への批判を受けて、今回はいわゆるオープン形式で参加制限を設けずに開催。

しかし、制限なくさまざまな記者が多数参加・質問したことで不規則発言も増えて進行が滞ったり、質疑が紛糾したりした面もあり、「1回目の参加制限はむしろ正解だったのでは?」という意見も散見される。

前提として、筆者は問題のフジテレビ会見に参加しておらず、映像で断片的に確認したのみ。10時間超も現地参加した記者たちに比べれば、当日の実態を詳細に把握できているわけではない。

しかし、それでも記者会見のオープン化に逆行する意見には強い違和感をおぼえるため、フリーランス記者としてこれまで参加した多くの記者会見での実体験に基づいて意見を述べる。

港浩一元社長
港浩一元社長
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まず、筆者は記者会見に過度な参加制限を課すべきではなく、むしろオープン化を進めるべきという立場だ。理由は、フリーランスである自らも排除されるという個人的事情だけでは決してない。閉鎖的な会見は癒着の温床となり、市民の知る権利を侵害し、社会全体に悪影響を及ぼすからである。

例えば閉鎖的な会見の悪い特徴が色濃く出ている有名な例として、昨今の首相会見や都知事会見を思い出してほしい。質問できるのは記者クラブに所属する大手メディアの記者に事実上限定される中、周知の通り、重大な不祥事や問題が起きても記者はご機嫌うかがいのような質問に終始。

たまに本質的な質問があったとしても、質問に全く答えないゼロ回答に対して更問いもせずあっさりと引き下がってしまうことが常態化している(※)。

こうした記者クラブと権力者の関係性が思いがけない結果を引き起こしたのが、昨夏の都知事選直前の都知事会見ではないだろうか。投開票を約1週間後に控えた会見(2024年6月28日)で都庁記者クラブの複数名が選挙戦の手応えやSNS戦略などを堂々と質問し、小池百合子都知事も嬉々として回答。

本来は「現職の都知事」として臨むべき会見で「候補者」としての質疑が繰り返されており、これは公選法(136条の2 第1項1号)で禁じられた「公務員の地位利用による選挙運動」に該当すると思われる。記者と知事による公選法違反の証拠が東京都の公式会見映像として残るという失態となった。

同会見のノーカット映像は上記から視聴可能