それは気持ちよくなりたいってこと?

「ダンナさんから、結婚を機に(風俗を)辞めてくんないか、とかはなかったの?」

「なんか言ってきた。事あるごとに言ってきたかな。で、私は『う~ん』とか言ってごまかしてた」

「答えを出さないでいたら、向こうが引っ込めるって感じ?」

「そう」

「それを言われるのは、いつ頃が多かった?」

「結婚前も、結婚後も……」

「なんで(風俗を)辞めないんだろう?」

「なんでだろう?やっぱり根本は、イヤっ、とか思いながらも、好きなのかもしれない」

「性的なことが?」

「そうだねえ~。なんか最近は。だから、前はさ、嫌々っていうのがあったんだけど、最近はそれが逆転してるっていうか……」

「いつまで風俗で働くんだ」夫から見下されても性的なことが“好き” 結婚してもやめられない人妻風俗嬢ハルカの恋愛遍歴_3
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「自分からやりたい?」

「そうそう」

「それは気持ちよくなりたいってこと?」

「うんうん。あと、いまダンナさんと(セックス)レスなんですね。で……」

「それは聞いてたけど、レスになったのはいつから?」

「けっこう早くからですよ。結婚する前から、ほぼほぼレスだったの」

2人のセックスレスは、同棲期間からだったという。ここでハルカは予想もしていない言葉を口にした。

#2に続く

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風俗嬢の事情 貧困、暴力、毒親、セックスレス―― 「限界」を抱えて、体を売る女性たち
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