現代の吉原には「高級店、中級店、格安店」が40店舗ずつ
ドラマでは、花の井(小芝風花)のような「花魁」と呼ばれる上級遊女が常連客を迎えに出向く艶やかな「花魁道中」のシーンも映し出されたが、一方の下級女郎である朝顔は飯も十分に食えず餓死して裸で打ち捨てられる。
当時の吉原内では、店がある場所も上級と下級ではっきりと分かれていた。
花魁がいる店は大店(おおだな)といって街の中心部に、下級女郎の店は街の外周を囲む黒く濁った「お歯黒溝(おはぐろどぶ)」と呼ばれる溝沿いの「浄念(じょうねん)河岸」や「羅生門河岸」と呼ばれるエリアに軒を連ねていた。
現代の吉原にも大きく分けて高級店、中級店、格安店とあるが、店の場所は江戸時代のようにはっきりと分かれているわけではない。
現地を訪れると、遊郭で遊んだ男が名残惜しくて振り返った柳あたりにあったことから名付けられた「見返り柳」はまだ残されていた。吉原大門があったとされる場所には赤い柱が立ち、さらに『べらぼう』ブームに乗って蔦重が開業した書店を模した店などができていた。
吉原に事務所を構え、風俗嬢の宣材写真を撮り続けて14年目になるカメラマンの酒井よし彦氏は言う。
「現在は高級店、中級店、格安店がそれぞれ約40店舗ずつあり、全部でおよそ120店舗あると言われています。江戸時代の吉原と街の面積と道筋は変わっていませんが、エリアごとに店の格が分かれているようなことはありません。
月に80人くらいの女性を撮影しますが、撮影中は女の子から愚痴を聞くこともあります。安い店だから悪い客が集まるなんてことはなく、高い店でもなかなかひどい客が来ると嘆いていますよ」