ファウルカップのようなものを入れているのかに見えたが…

「バチンッ」「ビタンッ」という音の刻みのなかに、時折、「ドスッ」と鈍い音が混ざる。リングのなかで、男性の股間めがけて女性が蹴り上げる。

東京・新宿歌舞伎町にあるラブホ街に佇む、一軒のキックボクシングジム。第2回「ドSのいおりん独裁政権 玉狩り大会」での一幕だ。

蹴られる男性・通称ドM軍4名に対し、蹴る側の女性はそれより少し多い。1名のM男が一定時間攻撃に耐えたら、次の選手に交代する。入れ代わり立ち代わり金蹴りを行い、戦闘不能に追い込めば、S女チームの勝利なのだという。

М男を椅子にするS女たち 写真/いおりん氏提供
М男を椅子にするS女たち 写真/いおりん氏提供
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好き者が押し寄せる無法地帯――そんな印象を持つ人もいるだろう。だが実際には鉄の掟が存在する。主催者のいおりん氏はこう話す。

「性器の露出や射精などが禁止なのは当然ですが、相手の同意なく身体に触れるのも厳禁です。もちろん、M男として登録していない一般来場者が金蹴りをされることもありえません。

また、写真撮影は原則禁止で、許可した一部のカメラマンについてもSNSへアップする際には参加者・来場者の顔ぼかしを義務付け、全員が安心して参加できる運営を心がけています」

あらゆる人々が秘密裏に参加するだけに、イベントそのものが安全基地となる必要がある。

ドM軍のなかに一際目立つ男性がいた。睾丸の大きさが成人女性の手のひらの大きさをとうに超えている。当初、ファウルカップのようなものを入れているのかに見えたが、レフェリーの入念なチェックの結果、どうやら生身の大きさであることがわかった。

たま金二郎さん、誰もが知る大手金融系企業に勤める50代だ。何十発という蹴りを被弾しても動じず、むしろ前に突き出すポーズに余裕がにじむ。彼の性癖への目覚めは早い。

「小学生の頃、有名なアニメで女性が男性を蹴るシーンがあって、それを一時停止して見るたびに興奮しました。女性の足が好きだと自覚したのもそのくらいだったと思います」

巨大な睾丸を持つ、たま二郎氏を豪快に蹴り上げる
巨大な睾丸を持つ、たま二郎氏を豪快に蹴り上げる

 その後、性癖について打ち明けることはなく、30年以上をすごしたという。欲を解放できる場所は性風俗店だけ。蹴られていくと、徐々に変化が現れた。

「もちろん最初は痛いです。しかしだんだんと痛みが薄くなり、ここ10年くらいはあまり感じなくなりました。睾丸も最初は一般的なサイズだったと思いますが、蹴られていくにつれて大きくなったんです」

しかし、たま金二郎さんはSM系の性風俗店には足を運ばないのだという。

「いわゆるプロフェッショナルではなく、男性の睾丸を蹴ったことのない素人女性に蹴られるのが好きです。足を使ったプレイをしたことのない女性にしてもらうことに興奮するんですよね。したがって、本格的なお店には行きません」