旦那は風俗の仕事をしていることを知ってる
「え、言ったんだ。向こうショック受けてなかった?」
「正直、向こうもびっくりしてて……」
ハルカは苦笑する。
「受け入れてくれた?」
私の問いかけに黙って頷く。
「受け入れられて、どう思った?」
「よかったと思った」
「ハルカさんも正直に言えたし……」
「そうそうそう」
こういうとき、じつは質問者のほうがどぎまぎしてしまう。なんとも他人事とは思えない心境になってしまうのだ。
「告白してから、向こうの態度に変化とかってあった?」
「態度の変化は……知ってるがゆえの、見下した言い方をされますよねえ」
「見下されるって、どういうふうに?」
「なんか、たまにね、向こうが頭にきた場合とかに、『いい歳こいてさあ』とか、『いつまでそんな仕事してんの』とか言われる」
これまで笑いの多かったハルカが、このときばかりは神妙な顔をして言う。
「いまも(風俗の仕事を)してるって知ってるの?」
「知ってる」
「てことは、同棲、結婚を含めて、それ以降は風俗から離れたことはなかったんだ」
「なんか店を変えたとかはあったけど、ないですね」
「結婚って何歳のとき?」
「37歳……」
「つまり7年以上同棲してたわけだよね。それがどうして結婚に踏み切ったの?」
「きっかけは、ホストの彼と同棲してたときから猫を2匹飼ってて、彼と別れてからもずっと飼い続けてたのね。その、最後の1匹が亡くなる前に介護状態だったから、2人で協力して病院に連れて行ったりとかしてて……。それで亡くなったときになんとなく、みたいな。結婚しようって言ってきたのは、向こうからかなあ。1か月くらいしてから……」
危機を共有したことで、同じ時間を過ごした相手との、より深い結びつきを求める心理が働いたのだろう。