「SNS広報は折田さんに監修を任せている」との趣旨のメッセージ
かつてアカウントに登録したことがある有権者のFさんは証言する。
「このルームには、アカウントに入るためのQRコードも送られてきました。『チームさいとう 公式LINE』と書かれたこのQRコードがLINEで転送され、アカウント参加者が増えていきました。それだけではありません。斎藤氏の街頭演説で聴衆の整理を行なっていた人たちは首からネームプレートのようにこのQRコードを下げ、聴衆にアカウント加入を誘っていました」(Fさん)
つまり、街頭演説の現場でも宣伝されたQRコードからアカウントに入ると、デマを広げたオープンチャットにたどり着く仕組みだったことになる。
このオープンチャットの運用には関東の選挙でSNS広報戦略の経験があるとみられる関東近辺在住の人物や、兵庫の近隣県に住所地を持ち中国資本企業で実務を仕切る幹部社員の可能性がある人物らが関わったとみられている。(♯17)この幹部社員は、自身が勤める会社の名刺を周囲に配っていたという情報もある。
「この人らがなぜ斎藤氏の支援態勢を作り上げたのか、興味深い」と公安関係者も話す。「私設」の体を取ったSNS応援団の解明は端緒についたばかりだ。
一方で、「陣営」の不透明なSNS戦略では、公選法違反での立件につながる重要な証拠の存在が明らかになった。
前出のmerchu社長・折田楓氏は11月20日に公開したnoteで、斎藤陣営のSNS戦略について「私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ(中略)などを責任をもって行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました」と記載。この作業を仕事として手がけたとも書いていた。
公選法はネット上の選挙運動について、業者が主体的に企画・立案を行い、この業者が選挙運動の主体と認められる場合、報酬の支払いは買収罪に当たる可能性があるとしている。
また、候補者本人や陣営幹部の買収行為が認められれば候補者の当選が無効になる場合もあり、斎藤氏側はこのnoteの内容の否定に躍起となっている。
斎藤氏の代理人である奥見司弁護士は記者会見で、陣営がポスターデザイン制作などの名目で計71万5000円をmerchuに支払ったと認めながら、折田氏はSNS広報をボランティアで行い、主体的な関与もないと主張した。
「ところが、斎藤陣営の選対中枢幹部が、支持者に『SNS広報は折田さんに監修を任せている』との趣旨のメッセージを送っていたことが分かりました。折田氏の言い分と一致します。兵庫県警と神戸地検は、斎藤氏を買収罪で、折田氏を被買収罪で捜査していますが、このメッセージを確保したことで立件が可能だと判断した可能性があります」(兵庫県政関係者)
SNSが選挙文化を変えたとまで言われた兵庫県知事選。そのSNSの活用の裏にどれほどの不正と違法があったのか。解明はこれからだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班