「ホームセンターや材木店で木を選ぶ作業からやった」
ミニだんじりを完成させた、智也さんの息子にも話を聞いた。
――だんじり祭りを初めて見たとき、どう思いましたか?
三田くん(以下同) とにかく迫力がすごくて、熱量にも圧倒されました。毎年お父さんと一緒にだんじりを曳くのが楽しみです。
――お父さんから「ミニチュアのだんじりを作ってみないか?」と誘われたとき、どう感じましたか?
難しそうだと感じました。特に垂木の部分や枡組、旗などの細かなパーツは、実際に作ってみても難しかったです。これまでプラモデルをいくつか完成させてきましたが、今回は説明書がないので、自分で考える余地が多くてやりがいがありました。
また、ホームセンターや材木店でヒノキの木を選ぶ作業からやったので、そこもプラモデルとは違うところでした。
――「実際にミニだんじりを作ろう」と思って見るだんじり祭りは、どんなところに注目しましたか?
やはり難しそうなパーツがどうなっているか、きちんと実物を見たいと思って参加しました。今回は大手町のだんじりを製作しましたが、次は他のだんじりに挑戦したいと思っています。
――小学校の図工の時間はそのスキルの高さから注目されるのではないですか?
小学校の図工の時間にガンプラを製作する授業があるのですが、それはかなり早く作り終えてしまいました。日頃から作っているので、できたのだと思います。
ただ、今回SNSで注目してもらったことは友だちに言っていないので、きっとみんな知らないと思います(笑)。
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彼の奥ゆかしく、自身の持つ高い技術を誇らない謙虚な姿勢が伝わってくる。
そんな才能を育てた智也さんには、一貫した教育方針があるという。
「子どもが興味を持ったものを見逃さずに、それに必要な道具を身近に置いておくことを心がけています。親は環境を整えるだけで、絶対に無理に引きずってやらせようとはしません。
子どもなのでモチベーションが低いことも当然あります。そんなときは『やらへんの?』とだけ意志確認をして、それ以上は深入りしません。強要すれば子どもは嫌になってしまい、せっかく楽しみながらセンスを磨いていこうとしているのに水を差すことになるからです」(三田智也さん)
智也さんはインタビューの最後、「ミニだんじりを通じて、彫刻の細やかさ、屋根周りのボリューム、形のきれいさ――といった、だんじりそのものの豪華絢爛な魅力を発信したい」と話した。
だんじり祭り自体の知名度は全国に轟くが、だんじり自体の彫刻物としての造形美に思いを馳せる人は少ない。三田さん親子はミニチュアを武器に、巨大な挑戦に乗り出す。
取材・文/黒島暁生 写真/三田智也 提供