がんの診療ガイドラインは充実している
多くの病気の中でも、がんに関する情報はネット上のみならず、どのメディアにもあふれています。適切な情報を探すにあたっては、「いったい何を参考にすればいいのか」「情報の質の確認はどうすればいいのか」といった疑問や疑念がわくのは当然でしょう。
医師や医療関係者が述べている内容であっても、それが自分の症状を改善させるにあたって有用なエビデンスに基づく情報かどうかは、なかなか判断がつかないことも多いのではないでしょうか。
どこにあるどの情報を参考にすればいいのか。その結論は、第八章で述べたように、「エビデンスに基づいた確かな医療情報は『診療ガイドライン』にあり」といえます。特筆すべきことは、各種のがんに関しては、それぞれの診療ガイドラインの公開が充実しているということです。
そして、各種の診療ガイドラインのいくつかは、「Mindsガイドラインライブラリ」にて、無料で誰もが閲覧、探すことができるのですが、それとは別に、がんの診療ガイドラインのみを一括して掲載する公的なサイトが存在します。さらに、患者さんや家族、一般の人を対象に、がんに関する情報を広く扱い、読みやすく掲載するサイトもあります。
これから紹介するその2つのサイトは運営団体がそれぞれに明らかで、「Mindsガイドラインライブラリ」と同じように不適切な広告が貼られていることもなく、気づかないうちに別の広告サイトを開いていたということもありません。
各種のがんの診療ガイドラインを集めたサイトがある
その「がんの診療ガイドラインのみを集めたウェブサイト」とは、「がん診療ガイドライン*1」です(図14)。
運営は「日本癌治療学会」で、会員登録などをしなくても誰でも無料で閲覧することができます。各種のがんの診療ガイドラインを、記述のフォーマットを統一し、「臓器別ガイドライン」に整理して公開しています。
臓器別ではたとえば、「脳・神経」│脳腫瘍(成人)・脳腫瘍(小児)、「頭頸部」│頭頸部・口腔がん・甲状腺腫瘍、「胸部」│肺がん・乳がん、「消化管」│食道がん・胃がん・大腸がん、「肝臓・胆道・膵臓」│肝がん・胆道がん・膵がんなどをはじめ、全身の臓器、部位別に分類されています。まずはアクセスしてみてください。
一般向けの「がん情報サービス」が参考になる
ただし、診療ガイドラインとは医師や医療関係者を対象とした手引書です。専門用語の解釈などに誤解が生じることもあるかもしれません。
そこでこれとは別に、患者さんや家族、一般の人を対象に、診療ガイドラインの内容などをわかりやすくまとめた「がん情報サービス」(図15)というサイトがあります*2。こちらも無料で誰でも閲覧することができるので活用しましょう。
日本には、日本人の死因でもっとも多いがんの対策や研究の推進などについて定めた「がん対策基本法」という法律(2007年4月1日施行)があります*3。「がん情報サービス」はこの法律に基づいて、「国立研究開発法人国立がん研究センター」が作成、運営する公式サイトです。
内容は、がんに関する基礎知識、診断と治療、症状と生活、予防と検診、療養生活、食事、心のケアなど、また、仕事との両立、費用、制度、情報の集めかたなど、そして、「がんと診断されたあなたに知ってほしいこと」として「がん相談支援センター」の存在と活用の勧めなどで、がんに関する多くの情報を網羅しています。
同サイトは医療者の間では、「がん情報の入り口」と言われます。
この「がん情報サービス」の情報は、ネットで閲覧できるだけでなく、冊子、チラシ、リーフレットも同サイトから無料でダウンロード、印刷することもできます。
たとえば、『患者必携がんになったら手にとるガイド普及新版』(A5判、228ページ)があります。ほかに、がんの実態調査をまとめた文書、用語集といった資料も充実しています。
患者さんの中には、「がんの診療時に担当の医師から、ネットで確かな情報を調べるときは、『がん情報サービス』のみを参考にしてください、とアドバイスされた」と話す人がいます。このように、「がん情報サービス」は、医師が患者さんに勧めるサイトの筆頭であると医療界では認識されています。
自分や家族、身近な人ががんになった場合、がんを予防したい場合、検診を受けようかと迷っている場合など、さまざまな状況でこのサイトは役に立つと思われます。