「こっちは困っているんだよ!」「お前カネあるだろ!」
このほかにも、友人から借金をしてまで江尻容疑者に金を渡してしまった女性がいる。そんな被害者のEさん(58)は、次のように語る。
「江尻から『16億円のプロジェクトが進行中だが、口座が凍結して金が動かせない。倍にして返すから、100万円貸してほしい』と言われました。抱きしめられて、『助けて。100万円がないと計画が終わってしまう』と言われたのですが、私には手持ちがなかったので、長年の友人に頼み込んでお金を借り、それを江尻に渡してしまいました」
その後、あの手この手で頼み込まれ、何度か貸すうちに、最後には江尻容疑者から毎日のように「こっちは困っているんだよ!」「お前カネあるだろ!」と脅され、さらに武田容疑者からも「社長の言うとおりにしてくださいよ!」と迫られるようになった。
最終的には、友人や会社の知人など複数名に金を借りてまで、江尻容疑者に渡すという事態に発展したという。
「毎日のように脅されて怖かったです。最終的に、総額700万円近くのお金を友人知人に借り、すべて江尻に渡しました。そのうちの48万円は離婚した元夫に頼み込んで返してもらいましたが、残りの600万円近くは今後、私が少しずつ返していくしかありません……」
さらに、Eさんは江尻容疑者らに脅され、他の被害女性に対して「事務員」のふりをして電話をかけさせられたこともあったという。
「江尻から金を返してもらえず怒っている女性に対して、『もう少々お待ちください』と電話で伝えるよう指示されて……。手伝わなければお金を返してもらえないと思い、断ることができませんでした。
現在、私はアルバイトで働いていて、月収20万円ほどの稼ぎで細々と暮らしています。今後、友人知人に毎月1万円ずつでも返していくつもりですが、毎日が地獄のようです」
被害女性たちが口々に「まるで洗脳されたようだった」と振り返る、江尻容疑者と武田容疑者による大規模な結婚詐欺事件。被害女性であるBさんやCさん、Dさんが実際に会ったもう1人の秘書役・浅野は消息を絶っており、警察は現在その行方を追っている。
果たして、この事件の全貌が明らかになる日は来るのだろうか。
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班