結婚詐欺のテクニックが書かれた“ミッションノート”
逮捕された2名の最初の罪状は、偽造有印公文書行使容疑だった。江尻舟一容疑者は「黒瀬舟」、武田佑気容疑者は「吉野」と偽名を名乗り、女性らに近づいていた。
「最初の逮捕は10月11日。愛知県名古屋市に隣接する市に在住の女性Aさん(47)に偽名で接近し、結婚の約束をほのめかしたうえで、『下請け業者に支払う工事代金を貸してほしい』などと金銭を借りる際に黒瀬名義の免許証を作成し、それを提示したことによるものでした。
この女性からは合計で1億円以上を騙し取ったとされ、10月22日には詐欺容疑で再逮捕されています。ほかにも被害女性は15名以上にのぼるとみられ、現在も捜査中です」(社会部記者)
この詐欺事件の特徴は、計画を主導した江尻容疑者を中心に、「秘書役」の武田容疑者や被害女性を巻き込み、女性たちには「仲介役」や「事務役」などを担わせるなど、非常に手の込んだ手口であることだ。
記者はまず、江尻容疑者と逮捕直前まで一緒にいた女性・Bさん(50代)にコンタクトを取った。
「江尻は、実際は無職であるにもかかわらず、自分を実業家と偽り、デートの際に秘書役の武田を同席させるなどして、女性からより多くの金を詐取しようとしていました。
女性たちとは主にマッチングアプリで知り合い、手当たり次第に「世界一愛している」などと甘い言葉をささやいていました。さらに武田は女性を“姫”と呼び、江尻の言葉を信じ込ませるように演出していました」(Bさん、以下同)
また、武田の部屋からは、江尻容疑者が書いたとされる“ノート”も押収されている。
「これは、“ミッションノート”と呼ばれるもので、そこには『手を繋ぐ』や『恋愛感情を持つ』といった女性と対面した際の心構えだけでなく、『男としてきちんと見てほしい』といったセリフなど、結婚詐欺のテクニックが詳細に書かれていました」
こうした江尻容疑者の手口にまんまと引っかかってしまった1人が、中学生と高校生の子どもを持つシングルマザーのCさん(48)だ。
Cさんは、マッチングアプリを通じて2022年9月に江尻容疑者と知り合い、1800万円を詐取された。なぜ、そんな事態になってしまったのか。
「彼は、埼玉に本社があるアスベスト関連の企業に所属していると、実在する会社を騙り、年収は3000万円以上だと言っていました。アプリでは、再婚を視野に入れて女性を探しているとも言っていました。
私と出会った際には『こんな素敵な女性は初めて』『君の子どもも含めて大事にしたい』と口にし、会うたびに花束やケーキ、アクセサリーなどの贈り物をくれました」(Cさん、以下同)