#2 セクキャバ嬢に堕ちた沙也香の場合

被害者は真面目で誠実、いわゆる「いい人」が多い

深刻化する「国際ロマンス詐欺」被害の実態を受けて警察や政府関係機関は注意を呼びかけているが、いまだに大金を奪われ、泣き寝入りする老若男女が続出している。被害相談を受ける国民生活センターによると、2022年度の相談件数は941件で、このうち男性が6割に上った。

被害額は数百万円から多い時で5000万円を超えるケースも報告されており、被害後に自己破産するケースも少なくない。そんな被害の実態をまとめた『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)の著者で、ノンフィクションライターの水谷竹秀氏に話を聞いてみると、知られざる被害者像が見えてきた。

ーー国際ロマンス詐欺の取材を始めてから、これまでに何人ぐらいの被害者にお話を聞かれましたか? その中で最も大きかった被害額についても教えてください。

水谷(以下略) 取材を始めたのが今からちょうど3年ぐらい前になります。それから現在まで十数人に取材をしました。大半は女性です。男性の被害者のほうが多いようですが、プライドが高いからあまり公にしたくないのか、男性被害者のほうが取材に応じてくれる人を探すのが難しいです。

被害額が最も大きかったのは4600万円です。

その被害者は起業家の美穂さん(仮名)という方で、取材をした当時、48歳のシングルマザーでした。

都内マンションで被害を語る美穂さん
都内マンションで被害を語る美穂さん
すべての画像を見る

ーーどのようにして彼女を見つけたのですか? また被害者の共通項などありましたら教えてください。

被害者は、いわゆる「いい人」が多いと思います。真面目で誠実な人。だから人を疑わないといいますか。あとは、夫婦関係が悪化していたり、マッチングアプリがうまくいかずに孤独を感じていたりとか、人生において悩んだり、失望感を覚えているタイミングに犯人からアプローチをされ、心の隙をつかれてしまうケースが散見されます。

被害の事実については、やはり恥ずかしいと感じている人が多く、だから身内や友人にはあまり言いたくない。「そんな見ず知らずの相手にどうして振り込んでしまうの?」「バカじゃない!」という視線に晒され、ただでさえ傷ついているのに、さらに自己嫌悪に陥るからです。そのためか、Twitterで匿名アカウントを作成し、やり場のない怒りや心境を吐き出している人が少なくありませんね。

4600万円を失った美穂さんのTwitterアカウント(取材当時)
4600万円を失った美穂さんのTwitterアカウント(取材当時)

4600万円を失った美穂さんは、「国際ロマンス詐欺被害者」というアカウントでつぶやいていたので、ダイレクトメッセージを送ってみたところ、意外にもすんなり取材に応じてくれました。