「借金で投機」は絶対に禁物
胴元の一人勝ちという意味では、有名なエピソードがある。
19世紀半ばにカリフォルニアでゴールドラッシュが起きた。全米から一攫千金を夢見た採掘者がカリフォルニアに集結した。彼らは、金脈を見つけて富豪になった者と金脈を見つけられずに破産した者に分かれたが、ゴールドラッシュのなかで確実に儲けた者がいた。採掘者たちにスコップを売りつけた業者だ。
金融業者が胴元として一人勝ちするという構造は、バブルの中で鮮明に浮かび上がる。それは、世界初のバブルである1630年代オランダのチューリップバブルのときにすでに始まっていた。
球根ひとつに数千万円の値が付き、富裕層から一般庶民にいたるまでが投機に熱中して、そしてバブル崩壊で軒並み破産者になった。
しかし、なぜ庶民がそんな高額投資に手を出すことができたのか。
当時、チューリップの球根は、現物の取引が中心だったが、途中から一部の高額球根には「所有権証明書」が発行されるようになり、球根そのものがまだ土中にあっても取引が可能になった。現代の言葉で言えば、セキュリタイゼーション(証券化)が行なわれたのだ。
そのことによって、チューリップの球根の所有権は分割できるようになったのだ。金融業者が発明したこの仕組みによって、庶民は高額球根投機の輪に加わることができた。それだけではない。金融業者は投機のための資金を融資して、バブルを煽ったのだ。
バブル崩壊で破産者になる人の多くに共通するのは「借金で投機をした」ということだ。自己資金だけで投機を繰り返したあとでバブルが崩壊しても、最悪自分の資産をすべて失うだけだが、借金で投機をするとそれだけでは済まない。
バブル崩壊時に資産は暴落するが、借金は一切減らないからだ。だから、「借金で投機」は絶対に禁物なのだ。
ただ、そんなことは投資の世界では常識中の常識だ。そこで胴元は、自動的に借金をさせる手段を考え付いた。それがレバレッジ(テコの原理)だ。
写真/shutterstock