反対されていた結婚

勇さんの兄(87)は今年2月、取材にこう語っていた。

「勇にしてみれば、ケン坊(健一)は大切な跡取り息子だったのよ。それこそ勇は田舎の東金から一人出ていって、浅草のなめし革の会社に入って独立、起業までしたわけだから、かなりの負けず嫌いだった。

自分が作った会社を後世に残したいという思いも人一倍強かったんだろう。実際に『女の子はいらない』というほど男の子を欲していたし、そうして生まれたケン坊には、相当お金をかけて手塩にかけて育てていた。

自分が敷いたレールに乗せようと、学校もすべて私立に進ませていたくらいだから、ケン坊が大学卒業後、すぐに会社を手伝わなかったときは腹を立てていたよ。

その後、ケン坊はいろんな職を転々としたあとに、一応は家業を継ぐみたいな形にはなったみたいだけど、勇からすれば納得できない部分も大きかったんじゃないかな」

ゴミ屋敷だった細谷家
ゴミ屋敷だった細谷家

一代で財を成したやり手の父とボンボンの「ケン坊」との確執が決定的になったのが、志保容疑者との結婚だったという。接客業に就いていた志保容疑者にとって、健一容疑者は「太客」だった。

「勇も猛反対したんだけど、そのまま結婚しちゃってさ。それまでケン坊の教育には相当力を入れてきたから、もうちょっと別の女性と結婚してほしかったんだろうね。だから結婚後も『あいつは期待はずれだったわ』と愚痴をこぼしていたよ。期待していた分ショックが大きかったんだろう」

一族会社の「ホソヤ産業」の行方は、放蕩息子よりもしっかり者の姉の美奈子さんの細腕にかかるところが大きくなっていた。会社の経理を担当していた美奈子さんが「ケンちゃんにはお金のことは任せられない」と周囲によくこぼしていたという。

次々に家族に手をかけ、資産を簒奪(さんだつ)した夫婦は、黙秘を続けているという。事件の結末はまだ、見えない。

志保容疑者
志保容疑者

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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班