円安で外国人の働き手も不足。頼みの綱は、スキマバイトサービス
経済学の基本では、人手不足を解消するには、給料をアップすることがもっとも効果的な手段である。業界的に業績が好調なら賃上げに踏み切る余裕もありそうだが、現実はそう簡単にはいかない。永山氏は次のように指摘する。
「報酬を上げたところで、賃上げは他業界でも進んでいるので……。それに外国人の人材も円安の影響で給与が割安になってしまうので、わざわざ日本で働いてもしょうがないとなるわけですよ」
プラスに働くと思われていた円安にまで苦しめられている、現在のホテル業界。これに対する一時的な対策として、現在は流行の“スキマバイト”の活用が進んでいるそうだ。永山氏は言う。
「『Timee(タイミー)』などのスキマバイトは、実は宿泊業界と相性がいいんですよ。いきなりフロントに立つのは難しいですが、清掃とかはマニュアル化しやすく、初心者でもやりやすい仕事の内容ではある。こうした相性のよさから、多くの宿泊施設が積極的に、一斉に活用し始めました」
しかし、こうした人手不足以外にも、宿泊業界には将来的に暗い影を落とす可能性のある不安要素があるという。
「実は、日本人の年間宿泊者数はコロナ禍前からずっと減り続けているんです。実質賃金が減っていき、余暇を楽しめなくなったことで、肝心の日本人が旅行をしなくなっています。
現状それを埋めているのがインバウンドによる需要なのですが、今は集客できていても、この盛り上がりが落ち着いたらどうなるか。
ここ1年でも東京・大阪・京都あたりのホテルはどんどん増えていますし、我々も背に腹は代えられず宿泊料をどんどん上げていますから、インバウンドが下火になったら、今度は“生き残り”の局面に入ってくるかと」(同前)
インバウンド消費が伸び続けるなか、観光は自動車に次ぐ“輸出”産業と化しているが、その先行きは必ずしも明るいわけではないようだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班