「多様性社会が生きづらい」

Xで53歳の父親の悩みを綴った女性の投稿が大きな波紋を呼んでいる。曰く、彼女の父親は、

「自分は人生のほとんどを理不尽・罵声が当然の昭和(的価値観の中で)で過ごしてしまったから、今の時代で許されないことを本当の意味で理解できていない だけど老害になりたくないので沈黙を選択していて、結果的に社会での自由な発言権を失っているため生きづらい」

と嘆いていたそうだ。当該ポストは瞬く間に拡散され、2000万の表示数を超えた。

この投稿に対しては、同じ50代以上の中高年層から似たような経験をしたと同意する声もあれば、若い世代、あるいは同世代からも、時代に合わせた価値観のアップデートは当然だとする声もあった。

令和となった今では、理不尽や罵声はおろか、何気ない日常会話やコミュニケーションの中にも、受け手次第でパワハラ、セクハラ、マタハラといったハラスメントに該当する言動と見なされることもある。

男性たちはそうした現状に対し、ハラスメントは許されることではないと理解した上で、 “自分の価値観が社会から大きく外れている”と感じつつも、“今更修正不可能”であると絶望し、黙ることを選択しているようだ。

コンプライアンス研修やハラスメント研修を導入する企業も多いが、長年植え付けられた価値観を急速に理解し適応することは容易ではないのだろう。

今年1月期に放送され社会現象ともなった阿部サダヲ主演の『不適切にもほどがある!』(TBS系)は、体罰もいとわない昭和のスパルタ体育教師・小川市郎が、コンプライアンスに厳しい令和にタイムスリップしてしまう物語だった。

市郎はその価値観の変貌ぶりに驚き、令和の人たちに違和感を覚えたり、異議を唱えたりする。

ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)
ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)
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例えば、「叱られて励まされて頑張って、そうやって関わり合って強くなっていくのが人間じゃねえの」、「たった1回踏み外した人間がさ、もといた場所に戻ることすら許されない社会なんて、おかしいだろ絶対。あれだよ、寛容じゃないよそんなの」といった具合だ。

しかし、これはドラマだ。現実社会で昭和からタイムスリップしたかのような振る舞いをしたら、処分を下される可能性もある。

では、冒頭のXでの投稿にあるような、昭和と令和の価値観の板挟みになっている人々は、どのように対処すれば良いのだろうか。心理士でオンラインカウンセリング「ココシェル」を運営する「ゆう」氏に話を聞いた。