公益通報者への弾圧が致命傷

9月19日夕、県議会で全会一致で可決された不信任決議は、ことし3月に当時の西播磨県民局長、Aさん(60)が知事や側近グループに絡む7項目の疑惑を告発する文書を関係者に郵送したことに斎藤体制がとった行動だけを問題視した。

県職員への理不尽な要求やパワハラ、県内の物産品のタカリなど、Aさんの告発内容は事実であることが続々とわかっている。

斎藤知事は文書を入手した直後、片山安孝副知事(7月末に辞職)らに公益通報者保護法違反の疑いが強い、発信者の捜索を命じた。3月27日の記者会見では、突き止めたAさんの役職名を口にして身元を明かしながら処分を予告。Aさんの言うことは「嘘八百」だと強調して告発内容から目をそらそうとした。

不信任決議案が全会一致で可決された瞬間、前を見据える斎藤知事(撮影/集英社オンライン)
不信任決議案が全会一致で可決された瞬間、前を見据える斎藤知事(撮影/集英社オンライン)
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県はAさんに懲戒処分をかけたうえ、片山副知事らがAさんの公用パソコンから抜き出した個人情報を幹部間で共有もしていた。幹部のひとり・井ノ本知明前総務部長(8月に更迭)は個人情報を県議らに見せて回っていた。さらに維新の増山誠県議は文書の全面公開を議会内で求めたりし、Aさんは「一死をもって抗議する」との言葉を残し7月に自死している。

今回の不信任決議はこの経緯をふまえ、「告発文書への初動やその後において、対応が不適切、不十分であったことにより、県政に長期にわたる深刻な停滞と混乱をもたらしたことに対する政治的責任は免れない」ことを唯一の問責理由とした。

告発文書にあった、パワハラやタカリ、昨秋の阪神・オリックスの優勝祝賀パレード費用捻出のための公金不正支出疑惑などは県議会調査委員会(百条委)で調査中であり、結論が出ていない事情もあるが、これらの問題に直接触れていないことが目を引く。

「パワハラもタカリも、『もうしません』とでも言って謝っておけば、知事を辞めさせられるほどのインパクトはないでしょう。反面、公金不正支出疑惑の解明はハードルが高く、百条委でやり切れる見通しはまだ立っていませんでした。しかしAさんという公益通報者を弾圧したことが最近新たな焦点に浮上し、知事には致命傷になりました」

19日の兵庫県議会で、不信任決議案採択を前に議場に入る斎藤知事(撮影/集英社オンライン)
19日の兵庫県議会で、不信任決議案採択を前に議場に入る斎藤知事(撮影/集英社オンライン)

 そう話す県関係者は、百条委が約9700人の県職員全員に行なったアンケートで69%の回答があり、この4割近くが知事のパワハラを見聞きしたと答えたことを挙げ、「組織として異常な状態です。みんな知事には辞めてほしいと考えていると思います」とも語る。そしてその理由は、パワハラだけではないとも言う。