居場所をなくした窃盗犯が住み着いた部屋
「霊視商法などが問題になった新興宗教の寺院跡で、法人は解散命令を受けています。ここには信徒らのノートなどが大量に残されていて、そのご家族のことなどを考えるといたたまれない気持ちになりました。
部屋とは違うかもしれませんが、一間だけの小さな堂宇は壁一面に位牌が並べられていて、それが長年の風雪で雪崩のように倒れかかっているのが圧巻でした。霊視商法自体はただのインチキでしょうが、そこにすがった、すがらざるを得なかった人々の思いは本物です。そういう念の降り積もった姿のように感じました」
ここは火災の跡があり、これまでの中でもとくに惨い形を残している。人のいた痕跡と、今ではどう頑張っても住むことができないほどにボロボロに崩れ落ちた建物のコントラストが印象的だ。
最後、4つ目は千葉県のホテル。
「ここはホテルが貸別荘に転用された、あるいはその逆に貸別荘が後に宿泊施設に使われたらしい建物で、7階建てもあるのに各室に浴室がなく、1階の共同浴場も家庭の風呂くらいのサイズしかない、わけのわからない建物でした」
「この建物の最上階の1室に、明らかに閉業後に人が生活していた痕跡がありました。残されていた郵便物や書類などから、窃盗犯が住む場所を失って暮らしていたようです。
裁判所からの通知などもあったため、逃亡というよりはすでに捕まって出所してきた後にホームレスになったのでは、という印象です(逃亡潜伏中だったら凄いですが)。1つの部屋は生活部屋として割と綺麗に整頓されていて、隣の部屋はゴミで一杯になっていました」
「おそらくこの人も好きでこそ泥などやっていたわけではないでしょうし、もしすでに償って出てきた後なら、この放浪生活はあまりに不憫です。犯罪はいけませんが、更生した人が再び罪を犯すことのないよう、再出発を応援できる社会であってほしいです。まぁ、実際会ってみたら同情の余地もないクズ人間なのかもしれませんが……」
前述のように廃墟には人が住み着くこともあり、廃ホテルなどにはホームレスが住み着いていることがよくあるという。実際にHaikenさんは、遭遇したこともあるそうだ。
「向こうは熟睡、こちらも静かに行動していたため、踏んでしまいそうになるほど近づくまで気がつきませんでした。起こさないようにそっと立ち去りましたが、今までに廃墟を見てきた中で、これが一番のびっくりでしたね」
また廃墟といえば、霊的な怖さも想像してしまうが、Haikenさん自身は霊感などはなく、そこに関心もないという。そのため、超常現象に出会った経験もないが、遺体が発見されたことで知られる宮崎県の某ホテルでは、廃墟慣れしたHaikenさんでもなんともいえないイヤな圧力を感じ、「一刻も早く立ち去らなければ……」と思ったことがあるとか。