大噴水の中で歌うコツは、おちょぼ口で息を吸う
――まさにTUBEのスタジアムライブが夏の風物詩と呼ばれる理由ですね。
TUBEのホールやアリーナのツアーは来ないけど、スタジアムライブだけ参加する方ももちろんいるんです。野外は、やっているほうも気持ちいいですよ。でも楽器って、外で演奏するのに向かないんですよね。湿度とか気温に左右されるので、トラブルが多いんです。だから楽器クルーは、この日のためにアイデアを出したり、防水加工の方法を開発したりして。
でも楽器に防水加工って、あんまり意味ないのよ(笑)。クルーが「これ、スイッチから水、入んないようにしたんすよ!」って自慢気に言ってくるけど、「お前の仕事、そこか?」って。でもライブ中、水と火っていう、楽器の近くで一番使っちゃいけないものをよく使うからね(笑)。
――TUBEのスタジアムライブといえば、バラードのギターソロ明けの大噴水ですよね。前田さん、あの激しい水の中でどうやって歌っていらっしゃるんですか?
こうやって、おちょぼ口でね、息、吸うの。鼻で水吸ったら終わりだから。歌う時は、ちょっと上唇を出して歌うと、上からも水が入ってこないから大丈夫なの。今年の噴水は最新鋭で、非常によかったんだけど、その分、粒子が細かかったんだよな。バンドのやつら、むせてたからね(笑)。
――ミスト状でなおさら入ってきちゃうんですね(笑)。前田さん以外は溺れると思います。
全員、むせると思うよ。でも僕は慣れました(笑)。コツがあるんです。
――過酷な夏の野外ライブもパワフルに駆け抜ける皆さんのパワーはどこから来るのでしょうか?
みんな特にすごく努力してるわけじゃなく、普通にジムに行ったりする程度ですよ。それに最近は、スタジアムライブの何日も前からそれぞれドクターについてもらって、本番当日もケアしてもらってます。リハーサルの時から見てもらって「このあたりで栄養入れましょう」って、途中で栄養補給したり。
リハーサルが終わったら、メンバー全員、並んで熱中症予防の点滴をしますね。じゃないと確実に熱中症になるので。あくまでも前田調べですけど、熱中症が進むと顔の中心が赤くなってくると思うんですよね。そこらへんはメンバー中心に気をつけるようにしています。なのでライブに参加されるみなさんにもくれぐれも気をつけてほしいですね!
野外をドームに変える時のライブ名は決めてる
――真夏にはこだわらないということでしたが、今後も野外ライブは続けられると思っていいですか?
野外ではやりたいですね。10月になるかもしれないけど、そこまで夏だってみなさんが認定してくれたらいいので。今後ドームで、しかも冬にやることになった時のタイトルは、20年前から決めてるんです。『冬でドームすいません』って(笑)。
――(笑)。TUBEのツアーやライブ名はダジャレが多いですよね。
真面目なタイトルはあんまりないですよ。社会に対するメッセージなんて1ミリもないから(笑)。
――そんなことはないと思います。それにスタジアムライブがどれだけ人を元気にして、救っているかわからないです。
TUBEの音楽は前向きで、「ともに歩んでいこう」っていうメッセージが強いからね。発信する我々もその曲に励まされながら活動してきましたよ。
〈後編へつづく:『「夏バンド」のイメージと戦ったTUBEが手に入れたもの』〉
取材・文/川辺美希 撮影/佐賀章広