パンの提供で男性客を魅了できるか
鎌倉パスタは「生麺」であることにこだわり、多くの店舗で「焼き立てパン」が食べられる。この2つが五右衛門との最大の差別化要因だ。
サンマルクはカフェで提供するベーカリーに強みがあり、パスタ業態と組み合わせることによってその武器の効果を最大化した。パンはパスタのソースにつけて食べることができるため、自然に単価アップと顧客満足度を高めることができる。
鎌倉パスタはショッピングモールに多く出店しており、必然的にファミリー層が主力ターゲットとなる。パンによって満腹感を提供することができれば、男性の満足度は上がるはずだ。
一般的にスパゲッティなどのパスタは圧倒的に女性に好まれるが、「鎌倉パスタは満腹感が得られる店だ」という認知が広がれば、男性の選択肢に入る余地は大きくなるだろう。父親が店舗選びの決定権を持っている場合でも、鎌倉パスタの入店確率を上げることができるというわけだ。
サンマルクの調査によると、鎌倉パスタは東京の認知度が70%弱とまだ高くはない。ブランド認知度を上げる取り組みを強化している最中だ。五右衛門はラーメンやうどんのような和風テイストに寄せ、男性客からの支持を得やすいようにしている。提供するメニューでターゲットの幅を広げているのだ。
そこでサンマルクは「おだしもん」という鎌倉パスタの派生業態を開発した。提供するパスタは和風だしを使ったもので、テイストはラーメンに近い。和風スパゲティという意味では、五右衛門と被る。ただし、おだしもんは、さらにスイーツを充実させて喫茶需要の取り込みも図り、鎌倉パスタが出店対象とならない、オフィスビルなどへの展開を計画している。客単価は鎌倉パスタよりも1割以上高いという。
サンマルクとドトール・日レスのパスタ業態における激しい戦いが幕を開けた。
取材・文/不破聡 サムネイル写真/shutterstock