めんどくさがり屋で、要領がいいタイプ

――東山高校でエース、キャプテンも務めた髙橋選手とはどう接していましたか?

藍が高校3年生の頃は、日本の高校バレーのレベルが一気に上がっていった時期だと思うんです。当時は駿台学園、松本国際、鎮西、東山の4校が中心。

僕はそのなかで「東山が一番下だ」と思っていましたから、中大でやってきたことや、自分自身のVリーグでの経験から戦術や技術を落とし込んでいきました。

ただ、ようやく形になり始めてきたところでインターハイを迎えた際に、松本国際の速いバレーに度肝を抜かれました。大げさじゃなく、1試合1試合、ものすごいスピードでスキルやレベルが上がっていく。

エースである以上、藍はそういう状況、僕が経験したことがないようなヒリヒリする場面で点を取らないといけない。1本のミスが勝負を分けることがわかっているからこそ、「そこでお前がひるんだらダメだろう」と練習の時から言い続けてきました。

――髙橋選手は、それをどう受け取りましたか?

取捨選択していましたね。もちろん僕は「間違ったことを教えよう」とは思っていないし、必要だと思うことを伝える。特に大学生と比べて、高校生に対してはわかりやすく、ストレートに熱量を持って伝えることが大事だと思っていたので、真正面から話をしました。

藍にとっては、僕はいいことはいい、嫌なことは嫌と言うので「はっきりモノを言う人だな」と思っていたでしょうが……もしかしたら「うるさいな」と思っていたかもしれない(笑)。

僕自身、祐希が大学4年の時に「言っておけばよかった」と後悔した経験があったので、同じ轍を踏まないために、伝えるべきことは伝えた。藍はそのなかから、自分に必要なことをちゃんと見極めて、選んで実戦できるタイプの選手でした。

関田誠大、石川祐希、髙橋藍らを育てた松永理生監督(写真・松尾/アフロスポーツ)
関田誠大、石川祐希、髙橋藍らを育てた松永理生監督(写真・松尾/アフロスポーツ)
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――髙橋選手の性格は?

祐希とも(関田)誠大ともまた違いますね。社交的だと思わせておいて、自分に理がないものに対しては「もういい」となるタイプ。めんどくさがり屋で、要領がいい(笑)。あの“腹黒さ”もまた、藍の魅力なんですよ(笑)。

――要領がいい、というのは髙橋選手ご自身もおっしゃっていました。

悪いことをしていても隠す。でも、バレる(笑)。いや、僕もすべて気づいていたわけではないから、彼は賢いですよ(笑)。

今思い出しましたが、僕がまだ東山高の教員になる前の話で、学校のルールもわかっていなかった状態でしたが、彼らがまだ学校にいる時間に、その日の練習メニューをLINEで送ったことがあったんです。

当時もバレー部の選手たちは、携帯電話を持つことはOKだけど学校内では使ってはいけないというルールがあったんです。でも僕の「今日の練習、こうやるから」というLINEに、「オッケーです」ってすぐに返事がきて(笑)。真相はわかりませんが、こっそり学校でも携帯を使っていたんじゃないかと……(笑)。