厚労相は「もう小林製薬だけに任せておくわけにはいかない」

こうした原因は少しずつ明らかになってきていたが、健康被害の規模が爆発的に拡大していることは公表されていなかった。

「またしても小林製薬の態度が原因ですが、厚労省も信じがたい失態です。同社は3月29日に、摂取との因果関係が疑われる死者は『5人』と発表していましたが、その後も死者に関する報告が増え続けたのに厚労省に報告せず、厚労省は6月中旬までこの異常な態度に気づきませんでした」(社会部記者)

小林製薬(撮影//集英社オンライン)
小林製薬(撮影//集英社オンライン)

結局、6月中旬に厚労省が問い合わせたのに対し、小林製薬は6月27日になって「新たに170人の死亡者の遺族から相談があり、うち76人について因果関係を調べている」と厚労省に報告したというのだ。

「小林製薬は逐次報告しなかった理由を『腎疾患と診断された事例のみを報告対象としていた』からだと釈明しました。厚労省はこれに怒り『医師の診断で健康被害が疑われる事例』をすべて報告するよう要求。

小林製薬がこれだけの規模の疑い例を報告してこなかったのは、最初の公表を2か月以上遅らせたのと同根の、被害の矮小化、隠蔽工作と受け取られても仕方ないでしょう。

さらに、そんな状況3か月間、見過ごしてきた厚労省も何をやっているのか。武見敬三厚労相は『もう小林製薬だけに任せておくわけにはいかない』と拳を振り上げていますが、失態を隠すためのパフォーマンスでしょうね」(社会部記者)

厚生労働省
厚生労働省

その後も死亡報告は増え続け、7月11日の厚労省の発表では、10日時点で同社に相談が寄せられた死亡事例は249人で、ここからサプリの摂取が確認されなかった146人と確認中の3人を除く100人が詳細な調査の対象となっている。

医療機関を受診した、生存している摂取者の数も2000人を超えている。

「戦後、大変な被害をもたらした食品健康被害事件としては、1955年ごろから起きた『森永ヒ素ミルク中毒事件』があります。ヒ素が混入した粉ミルクを飲んだ乳幼児、約130人以上が死亡し、被害を受けた子は1万2000人を超えたとみられています。

今回、因果関係が疑われる死者の規模は、ヒ素ミルク事件の被害者数に迫っています」(社会部デスク)