サプリによる腎臓障害は漢方薬で起きた事例はあるが…
阿部医師が勤務する日大板橋病院(東京都板橋区)に小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」を服用して異変を訴える患者が訪れるようになったのは昨年12月上旬からだ。
「70代の女性患者さんが最初でした。昨年11月ごろに尿が泡立っておかしいと思い自宅近所の診療所で血液と尿の検査をしたそうです。腎機能の異常を示す高いクレアチンの値が出て、尿蛋白と尿潜血も認められました。
私どもの病院での検査でも急性腎障害が疑われたため入院しステロイドを投与しました。今年1月に生検を行い詳しく調べると『尿細管間質性腎炎』が起きていたとみられる所見が出ました」(阿部医師)
尿細管間質性腎炎は多くの人にはなじみのない病名だ。
「腎臓は尿をつくる臓器です。腎臓に約100万個あると言われる糸球体が血液を濾過します。そこで出てくる原尿の中で体に必要なものは、糸球体につながる尿細管の中で『尿細管細胞』に再吸収され、最終的に不要なものが尿として排泄されます。
毒性のある化学物質によってこの尿細管がダメージを受けると、周辺の間質と呼ばれる組織で炎症が起き、さらに尿細管をつぶす状態になる。進行すると血液の濾過ができなくなる腎不全になり、これは治療法がないため人工透析をするしかなくなります。これが尿細管間質性腎炎です。心臓の病気がある人は心不全で死に至ることもあります」
原因は鎮痛剤や抗生物質が多く、まれに膠原病に関連して起きることもあるという。
「しかしこの患者さんは大きな既往歴や持病も常用薬もありませんでした。ただ、紅麹コレステヘルプを内服していたことが聞き取りで分かりました。サプリによる腎臓障害はかつて、チャイニーズ・ハーブ(漢方薬)で起きた事例があります。紅麹サプリが原因だとは、当時はさほど思っていませんでしたが、ほかに疑わしい薬はありませんでした」