「チケット代の値上げなんて、人気者になったつもり?」

次に話を聞いたのは、地下アイドル歴7年目の20代女性。いくつかのグループを渡り歩いた経験がある彼女も、ファンから心ない発言を浴びせられたことが多数あるという。

––––プロデューサー目線のファンについて、どう思いますか?

私の場合、活動を続けて人気になればなるほど、そういったファンがどんどん増えていきました。特に古参ファンに多くて、「昔はもっとチケット代が安かったのに。値上げして、人気者になったつもり?」と言われたり、(ライブや撮影会の)新しいルールに対して文句を言われたりします。

グループの人気が出たことで、撮影会の“剥がし”が厳しくなったり、接触が禁止になったりしたんですけど、それに対して「こんなに通っているのに、距離を感じるようになった」と言われたこともあります。

でも、メンバーの中にもルールを破って撮影会でファンとハグしてしまう人がいて……。そういう子がいるから、「〇〇ちゃんはハグしてくれるのに、君はしてくれないの?対応悪くない?」って言われてしまうんです。「私はちゃんとルールを守っているのに、何でそんなこと言われなきゃいけないの?」って思いますね。

––––アイドル本人たちは、裏でプロデューサー目線のファンのことをどう言っていますか?

撮影会で嫌なことを言われた場合、終わってから楽屋で「かまってちゃんのオタク、マジうざい」とか「ストレス発散したいだけでしょ」とかメンバー同士で愚痴を言い合うこともありますね。

地下アイドルのライブ風景
地下アイドルのライブ風景

––––一番ショックだった言葉は何ですか?

最初に所属していたグループを卒業して、別のグループに入ったときに、それまで応援してくれていた方たちに「そのグループに入るなら、もう応援しない」などと怒られました。いろいろ考えて決断したことなのに、SNSで否定的なコメントがたくさん届いてショックでした。そのときは「いちいち報告しないで、黙ってファンをやめろ」って思いましたね。

その反面、地下アイドルの場合はファンが1人でも減ると、売上の面でかなりの痛手になるんです。だから文句を言われるのは嫌ですが、現場に来てお金を使ってくれるファンには感謝しています。

––––アイドルが参考にするのは、どんな意見ですか?

髪型やメイクに関する意見は、自分に何が似合うのか知ることができて、勉強になります。「前の髪型のほうが似合っていた」とか「今日はメイク濃いね」とか、そういう意見はできる限り取り入れて、ファンの人に喜んでもらいたいと思っています。

––––ファンがプロデューサー目線になってしまうのは、なぜだと思いますか?

地下アイドルは(立場が)下に見られやすいので、説教してきたり、上から目線で高圧的な態度を取ったりするファンが多いのかなと思います。「ファンが少ないから、俺がわざわざ来てやっているんだぞ」という感覚の人もいるかもしれません。

なかには本当に「有名になってほしい」という気持ちでアドバイスしてくれている方もいると思いますが、推しに対して独占欲や古参アピールしたいという気持ちから、そうなってしまう人が全体的に多いように感じます。

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一部のファンによるデリカシーのない発言に心を痛め、辞めてしまうアイドルも多い。推しを熱心に応援するのはいいが、くれぐれも節度を持った言動を心がけてもらいたいものだ。

取材・文 集英社オンラインニュース班