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〝売掛けの沼〟に陥った発達障害の女性

歌舞伎町のホストクラブで「売掛け」を生んだのは、ホストクラブの〝祖〟とされている「愛」本店を創設した愛田武だ。

詳しくは拙著『夢幻の街――歌舞伎町ホストクラブの50年』に書いたが、当時と昔とではホストクラブの客層とビジネスモデルがまったく違った。

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1990年代以前の愛本店でいえば、客層は2つに分かれていた。1つは店のダンスフロアでホストと社交ダンスをすることを目的として訪れる富裕層の女性。彼女たちには主に社交ダンスの得意なベテランホストがついた。

2つ目の客層が、夜の街で働く女性たちだ。ホストは吉原のソープランドや銀座のクラブへ自腹営業に行き、そこで月に数百万円を稼いでいる女性と知り合い、店に客として呼んでいた。彼らは店ではあまり金を使わさず、「裏引き」といって店の外で貢いでもらい、ヒモのような生活をしていた。店に金を落とさせるより、〝小遣い〟としてもらったほうが得だと考えていたのだ。

しかし、現在のホストクラブに来る客層やビジネスモデルはまったく異なる。

現在のホストクラブの集客方法は、ホスト個々がSNSを使って行う。SNSで引っかかる女性客は昔のような富裕層やナンバー1風俗嬢ではなく、家出少女のような生活困窮者が大半だ。簡単に言えば、ホストクラブで遊ぶ金などそもそもない。

そのため、ホストは売掛によって店で遊ばせた上で売春をさせる。だが、そういう女性たちの中に、高級風俗店でナンバー1を取れるようなコミュニケーション能力の高い人はまれなので、1回数千円から1万円ほどの格安風俗店に勤めるか、路上売春をしなければならない。

ホストにしてみれば、女性が稼げなければ売掛けの残りは自腹になる。それなら、店で金を浪費させず、その額を貢がせたほうが得だという見方もあるだろう。

だが、SNSで女性を引き付けるには、店でのランキングがモノを言う。女性のほうも№1だからとか1億円プレイヤーだからということで引き寄せられる。そのため、ホストにしてみれば、リスクを承知で女性に売掛をさせ、店で大金を遣わせる必要があるのだ。もっとそれで儲かるのは店だけなのだけれど。

このようにしてくり返されているのが〝売掛けの沼〟なのだが、なぜ発達障害の女性が、こうしたホストにつかまり、売春を強いられやすいのだろうか。今回連絡をくれた住谷美月(仮名・23歳)のケースを紹介したい。