〈後編〉

厳しい母に叩かれて育つ

白石咲良さん(仮名・30代)の母親はとても厳しい人だった。保険会社勤務の父親は転勤族で、幼いころは社宅で暮らしていた。周囲は教育熱心な家庭が多く、白石さんは母親にしょっちゅう怒られていたという。

「みんなはいい子なのに、あなたはなんで同じようにできないの?」

白石さんは活発でやんちゃなタイプ。片付けや勉強をしないで遊びに行こうとすると、押し入れに閉じ込められたり、ベランダに放り出された。

「とにかく勉強して、いい大学に行って、いい企業に入れと。テストの点数が悪かったりすると、蹴られたり叩かれたりしてましたね。ピアノも習わせてもらっていたけど、1日2時間以上練習しないと叱責の嵐で、うまく弾けないと、めっちゃ手を叩かれましたね。

今風に言うと、ちょっと虐待入ってた感じですけど、母も祖母にほうきで叩かれて育ったので、厳しく育てるのが当たり前だと思っていたみたいですね」

写真はイメージです。画像/shutterstock
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小学校では友達がほとんどできなかった。転校が多かったこともあるが、母親が洋服など見た目を構ってくれなかったことも大きいという。いつも着せられていたのは男の子向けのトレーナーとズボンだ。

「3歳下の弟にお下がりできるようにって。しかも、お腹壊すからって、トレーナーの裾をズボンにインさせられて。見た目に関しては切なかったですね。顔も水疱瘡の跡がすごかったんで、あだ名はクレーター。私はけっこう生意気で、ガキ大将にも『バーカ!』とか言い返しちゃったんで、よく追いかけられて殴られてました」