飼い主が飼育に疲れ、老犬ホームを利用するケースも

板橋さんがペット業界に入ったのは約18年前。もともとは犬のトレーナーだった。トレーナーをしながら老犬介護にも長く携わってきたといい、その後、動物病院で働いたこともある。自らも柴犬を飼っている愛犬家だ。

そんな板橋さんでさえ、老犬ホームの仕事は大変だと感じることが多いという。

「立てない子もいるので、そうした子のお世話するのは体力的にキツイし、夜勤もあるので楽ではないです」

老犬を預かるケアルーム
老犬を預かるケアルーム

3階のケアルームには7つの部屋が設置されている。それぞれにカメラがついており、別室で犬の様子を管理できる。

「老犬ホームを利用される方の事情はさまざまです。例えば、犬の夜鳴きがひどいとか、てんかんの発作を起こしてしまうなどの理由で、飼い主様自身が夜通し眠れない日々が続いてしまうということが多いです」(同)

ケアルーム内で夜鳴きがひどいと、周囲の犬が眠れなくなるのではないかと心配したが、「老犬は耳が遠くなっている子がほとんどなので、今のところ大丈夫です」(同)とのことだった。

現在、THEケネルズ東京のスタッフは、パートなどを含めて17名。そのうち、老犬を預かるケアルームでは4名のスタッフが中心となって、8名程度で24時間交代で犬の介護にあたっているという。この老犬ホームを利用する飼い主は、40代から高齢の方までさまざまだ。

「もともと創業者が老犬を飼っていたのですが、仕事の都合で犬を預けようと思っても、老犬だと断られてしまう施設が多いと困っていたんです。そこで、老犬でも安心して預けられる施設が必要だと考え、2018年11月にTHEケネルズ東京をオープンさせたのがきっかけです」

2018年11月にオープンしたTHEケネルズ東京
 
2018年11月にオープンしたTHEケネルズ東京
 

そう話すのは、この施設の責任者の池貝英司さん(58)だ。この施設ではオープン以来、35~40頭の老犬を預かってきた。老犬ホームは、通常のペットホテル以上に、きめ細やかなケアが必要である。持病を抱える犬も多いからだ。

「うちでは、過去に動物病院で看護経験がある方を中心に採用しています」

そう池貝さんが言うように、老犬ホームのスタッフには看護や介護の専門的な知識が求められている。