「お蔵入りにしたら、マズイことが起きるかも」

–––––そもそも『三茶のポルターガイスト』シリーズをYouTubeなどではなく、映画として展開しようと思った理由は何なのでしょうか?

それは、単純にお金の問題ですね。作品のコンセプト上、専門家を呼ばないと成立しませんし、高性能な機材をレンタルすると高額な費用がかかります。YouTubeでは到底ペイできないので、映画というフォーマットでないと実現不可能でした。逆にいうと、コストをかけてもいいから、より踏み込んで検証したいと思ったんです。

角由紀子さん
角由紀子さん

–––––前作を振り返ってみて、いかがでしたか?

前作は3人の専門家をお招きして、ヨコザワ・プロダクションで起きる現象が「ヤラセ」でないかを調べてもらったんですが、どんなに細かく検証しても、幽霊がいることの証明には至らないなと感じました。「心霊現象の検証って、そんなにすぐには前に進めないんだなぁ」と突きつけられたというか。

–––––今作も専門家による調査と検証をベースとしていますよね。

はい。ただ、今回は明治大学兼任講師の小久保秀之先生であったり、東京工業大学理学院物理学系助教の山崎詩郎さんだったり、アカデミアで権威のある方々に参加いただけたことは大きな一歩だと思っています。

心霊現象などのオカルト検証は、どうしても学術研究的な部分から離れてしまうので、あまり関わりたくないという学者さんも多くいらっしゃるんですよ。その中でお二人が企画に参加してくださったのは、非常に意義のあることです。
 

–––––今作は、「あまりにも怖すぎる作品だから、公開を中止しよう」と映画プロデューサーから打診があったそうですね。それでも公開に踏み切った理由は?

まず、本当にすごい映像が撮れたので、世の中の人に見せたいと思ったんですよ。それにちょっとズルイ言い方ですけど、彼ら(霊)も見てほしいから姿を現したのではないかな、と。

あと、たとえば自宅など、ヨコザワ・プロダクション以外でこの映画に関連する動画を見ているときにも、変なことが起きやすかったんですよ。線香の匂いがしたり、物が勝手に動いたり…。なので、これをお蔵入りにしたら、何かマズイことが起きるのではないか、という不安もありました。

–––––ヨコザワ・プロダクションの代表取締役で、物件オーナーである横澤丈二さんも、検証にとても協力的ですよね。

よく誤解されるのですが、横澤さんは、この映画に関わっても何もメリットがないんですよ。ただただ「自分の体験を、ほかの人にも教えてあげたい」という気持ちで協力してくれていて。この映画にかかわらず、あの場所で儲けようという思惑がまったくない方なんです。

ただ、最近はヨコザワ・プロダクションに対してネット上で「ヤラセだ」というコメントを投げる人たちもいますし、スタジオ自体の評判にも影響する可能性があるので、検証を続けられるかどうかは横澤さんのご心境しだいかなと思っています。