過度な部活動には反対だが、甲子園はOK?
土日を含む異常な長時間労働に苦しむ教師たちを救うために、本書が提示する解決策は、学校の〈サービスの低下〉をおこなうべきであるという主張に集約されている【2】。
〈働き方改革というのは、ストレートに言い切ってしまえば、「学校のやることを減らす」、つまり、「サービスの低下」に他ならない。中学校部活動の地域移行のように、これまで無料だったものに費用が発生するケースだってある。もちろん、教員の無償に近い労働が支えてきたこれまでの状況が異常だったことは言うまでもないのだが。
教職を持続可能にし、子どもに向き合うという最も重要な機能を高めるためには、それ以外の機能を学校からなくしてしまうか、さもなくば、相応の投資をして人手を確保するか、その2つの路線しかない〉【2】
では、具体的に何をやめるべきなのか。
目次に謳われている通り、そのひとつが〈部活〉であることは論を俟たないが、朝日新聞と毎日新聞が主催し、自紙の購読者を増やすための販促の目玉としてフル活用してきた〈部活〉の象徴、甲子園について一言もないのはこれまた不可解だ。
朝日新聞取材班の記者たちが事前に目を通したに違いない『教育現場を「臨床」する』(内田良)でも名指しで批判されるほど、甲子園は〈部活動の負の側面〉を象徴するイベントと目されている【6】。