他人の「選択的夫婦別姓」が、どうしてそんなにイヤなのか
二〇二〇年十二月末、政府の第五次男女共同参画基本計画改定をめぐって、自民党内では、「夫婦別姓(夫婦別氏)」への展望をどのようにもりこむかをめぐる政策的対立があらわとなった。
「男女共同参画基本計画」とは、今後一〇年間の「基本認識」と、今後五年間の「施策の基本的方向」及び「具体的な取組」を定めるものだ。二〇二〇年十二月四日時点での政府原案では、選択的夫婦別姓の容認について、次のように触れられていた。
「誰一人取り残さない」社会の実現に向けて、婚姻前の氏を使用することができる具体的な制度のあり方について、国会において速やかに議論が進められることを強く期待しつつ、国会での議論の動向などを踏まえ、政府においても必要な対応を進める(朝日新聞DIGITAL)
「議論の動向などを踏まえ」「必要な対応を進める」という実に曖昧な書き方をしているとはいえ、夫婦別姓を可能にする制度について議論することが方向性として示されていた。
ところが、この程度の文面であっても、自民党内の夫婦別姓反対派は強硬に抵抗した。反対派有志議員は「「絆」を紡ぐ会」なる議員連盟を結成して下村博文自民党政調会長(以下、役職はすべて当時)に申し入れを行ったり、基本計画原案を議論する党の会合に反対派議員を動員するなどの動きを強めた。
その結果、できあがった基本計画改定案は、大幅に後退したものとなった。
家族形態の変化及び生活様式の多様化、国民意識の動向なども考慮し、夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方に関し、戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、子供への影響や最善の利益を考える視点も十分に考慮し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める
改定案からは「婚姻前の氏を使用することができる具体的な制度のあり方」といった夫婦別姓をめざす方向性は消え去り、逆に新たに「戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史」と、保守派の家族観にかかわる文言が盛り込まれた。これは「後退」というよりも「逆行」に近い。