当初はマリリン・モンローが演じるはずだった
その印象的なタイトル、そしてオードリー・ヘプバーン主演作として知られ、映画ファンをはじめ、今も多くの人々から愛され続ける『ティファニーで朝食を』(Breakfast at Tiffany’s/1961年)。
ヒロインのホリー役には、当初セクシーで色気漂うマリリン・モンローという話もあったが、“娼婦”という設定に女優生命に傷がつくという理由で断られてしまう。
そこで今度はオードリーにこの役がまわってくるのだが、彼女はモンローとは真逆の可愛らしく気品がある妖精のようなイメージ。
当然のように代理人からは難色を示された。
しかし、1958年に発表されたトルーマン・カポーティの原作小説を映画用にアレンジした独自のストーリーが魅力を放ったこともあり、結果的に30歳代に突入したオードリーのキャリアを磨くことに成功する。
この映画の名シーンと言えば、何よりもあの冒頭の光景を思い浮かべる人が多い。
早朝、NY5番街のティファニー本店前。コーヒー片手にクロワッサンを頬張るオードリーの姿に、ヘンリー・マンシーニの甘美なメロディ『ムーン・リバー』が重なるあのシーン。
長い映画史に残る秀逸なオープニングだ。これだけで『ティファニーで朝食を』はロマンチック・コメディのクラシックに到達したと言っても過言ではない。舗道に立つのは、オードリー・ヘプバーンでなければならなかった。
ちなみにこのシーンは撮影初日に撮られたそうだ。
ミッキー・ルーニー演じる日系人の滑稽な描写が人種差別的だとして物議を醸した時期もあったが、ティファニーでわずか10ドルの買い物をしようとするところ、NY近辺の840匹から選ばれた“名前のないネコ”との数々の絡み、そして窓辺でギターを弾きながら『ムーン・リバー』を歌う……今ではそんなことは気にならない。