ブラック校則がなくならない理由

2017年の大阪黒染め強要裁判を大きなきっかけに、「ブラック校則」と呼ばれる理不尽な校則が注目されるようになった。民間団体や弁護士などによる実態調査が進められ、2019年、2020年頃から徐々に先進的な学校や教育委員会で具体的な見直し方法の検討や実施が行われてきた。

2021年には、筆者が代表理事を務める日本若者協議会が校則見直しを進める際には、生徒も議論に参加するよう求める提言を文部科学省に提出し、生徒を交えた校則見直しの議論が加速するようになった。

そして2021年6月に、文部科学省が「校則の見直し」に関する通知を各教育委員会などに発出し、東京都教育委員会では下着の色の指定やツーブロックの禁止などのブラック校則が全廃された。このように着実に改善は進んでいる一方、現場ではまだまだ多くの細かい校則が存在し、明確にルールとして書かれていなくても、指導上、厳しい校則が強いられているケースも多く存在する。

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また、2022年12月には、教師用の生徒指導に関するガイドブックである「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂され、子どもの権利を尊重すること、校則見直しを進める際には生徒の意見を尊重することなどが記載された。こちらも改善が見られる学校もあれば、私立学校を中心に、生徒が声を上げても、ほとんど聞き入れてもらえないケースもいまだ多く存在する。

このように行ったり来たりをしている校則問題だが、生徒を交えた校則議論が広がるのも今回が初めてではない。過去を振り返ってみると、戦後3回、校則見直しの議論は盛り上がっている。

1回目が、戦後すぐから1950年代。戦後、GHQが日本を民主国家にするため、生徒会(生徒自治会)やPTAを導入し、その時、文部省が作成した「新しい中学校の手引」においても、学校を民主化することが記載された。

生徒会の目的は「生徒をして、民主社会における生活様式に習熟せしめることである」とし、学校の活動は「民主的でなくてはならない。そのためには、学校は、生徒の活動に関する生徒との協議会をいろいろ持つことが必要である。

……いろいろな協議会の中には、校則や、学級のきまりや、学級文庫・学校図書館の規則を推薦するための協議会」と記述している。

これを受けて、各学校で民主的な取り組みが広がった。例えば、都立第一高校(現在の日比谷高校)の生徒会は1949年に「星陵生徒会自治憲章」を制定し、第4条では「(生徒会)会員代表、PTA代表、校長で三者協議会をおき、相互の意思疎通をはかる」とされた。