メッセージやストーリーテリングが心を動かす

感情的コネクションは、消費者との強力な関係の構築やブランドロイヤルティ(ブランドに対する信頼感・愛着・親近感)の確立のために忘れてはいけない視点だ。

マーク・ゴーベは著書『エモーショナルブランディング』で、ブランドと消費者の間の感情的な結びつきの重要性に焦点を当てた。消費者がブランドや製品との間に感情的な結びつきや関係性を感じるようにデザインされたメッセージやストーリーテリングは、人々の心を動かし、ブランドとの深い結びつきを形成すると指摘している。

感情的コネクションは、ブランドや製品との間に感じる喜び、信頼、安心感などのポジティブな感情や、共有する価値観、思い出などに基づくことが多い。これが強いと、消費者はそのブランドや製品にロイヤルティを持ちやくすなり、リピート購入の確率も上がる。

グミビジネス成功のカギは「人間くささ」と「感情的コネクション」。商品を流行させる「ファンマーケティング」をグミに学ぶ_3
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「子ども時代の思い出の味」が感情的な価値を生む

グミの形や色、パッケージのデザインは、楽しさや食べる喜びを強調する。ハリボー社は 「子ども時代の思い出の味」をマーケティング戦略で打ち出すことで、製品に懐かしさなどの感情的な価値を持たせ、消費者がグミを選ぶ動機につなげている。

そして、グミは友人や家族との共有に適した菓子であり、グミを通じたコミュニケーションや共有の瞬間は、消費者とブランドとの間の感情的なつながりを強化する。

多様なフレーバーは、新しい味の発見という驚きや喜びを提供する。消費者が新しいフレーバーに出会うたびに、ブランドに対する好奇心や期待感が高まっていく。

グミのヒットには、感情的コネクションづくりの手法と、それが生み出す消費者との絆が大きく寄与している。この組み合わせが、グミを単なる菓子から、消費者の心に残る存在へと昇華させている。

文/白鳥和生 画像/shutterstock

『グミがわかればヒットの法則がわかる』(プレジデント社)
白鳥和生
グミがわかればヒットの法則がわかる
2024年4月26日
1,870円(税込)
1.3 x 13 x 18.8 cm
ISBN: 978-4833425247
日本経済再生のヒントは、「グミ」にある!?  コンビニの棚を席巻する大ヒットの謎に迫る

飲食料品の世界で起きた、四半世紀ぶりの〝大逆転劇〟。 2021年、グミがチューインガムの市場規模を上回った。 グミは日本で発売されて40年ほどの歴史しかないが、いまや老若男女問わず愛されるお菓子に成長した。

グミとは何者なのか。グミには5つの顔がある。
① 「幸せ感」につながる小腹満たし・気分転換ニーズを満たす
② 「コスパやタイパ」につながる代替ニーズを満たす
③「楽しさ」につながるバラエティーの豊かさ
④「期待感」が高まる相次ぐ新商品の登場
⑤「つながっていることを実感」できるコミュニケーションツール

様々な顔を持つグミの魅力に惹きつけられたファンたちが集う「日本グミ協会」という団体が生まれたり、「グミ文化祭」というイベントが開催されたりしていることにも注目だ。

人口減少が進む日本で、グミがヒットしたひみつとは?  元・日経新聞記者で、あらゆる小売業の動向を長年追いかけてきた著者が、マーケティングの観点からわかりやすくひもとく。
【目次】 
はじめに
◆第1章 グミの歴史と人気 ・グミの起源はドイツ ・日本は「明治」が先陣切る ・2021年にグミ市場がガム市場を逆転!  ・コロナ禍が後押しした市場拡大 ・小売り側の反応 ・物価高騰のなかでも支持を集めるグミ ・コラム かむことと健康の関係
◆第2章 消費者の声から読み取る「グミ」とは ・グミは誰が食べているか?  ・人口が減少するニッポンで、なぜグミは成長しているのか ・「タイパ」と「代替需要」  ・Z世代とグミ ・消費者が持つ「グミ」のイメージ ・情緒的価値が大切なベネフィット ・コンセプトが商品の命 ・グループインタビューから見えてきた消費者インサイト ・グミを形づくる5つの要素 ・コラム マーケティングコンセプトハウスの山口博史社長の分析
◆第3章 メーカー各社の戦略 ・グミの持つ多様性と技術 ・明治 ・カンロ ・UHA味覚糖 ・ハリボージャパン(ハリボー日本法人)  ・コラム グミ市場を支える地方メーカーと菓子卸
◆第4章 企業と生活者による「共創」  ・ヒットの法則とグミ人気 ・ファンがブランドを育てる ・ファンマーケティング ・勝手連がグミを応援 ・オタクとは違う「推し活」  ・コラム 「グミ文化」を目指す(日本グミ協会の武者慶佑名誉会長の寄稿) 
おわりに
参考文献
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