代役も交代も楽しむと同時に温かく見守ることが本当のエンタテインメント

直近の突発的交代といえば、TARAKOさんの急逝に伴う『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系列)の声優交代であろう。

1990年から2024年まで初回からずっとまる子の声を担当していた彼女の急逝に、多くの人が深く悲しむとともに、果たして彼女の代わりをできる人などいるのだろうかとの思いを持った。

そもそも長寿アニメにとって声優交代はつきもので『サザエさん』(フジテレビ系列)も主人公のサザエ=加藤みどり以外、主要キャラはほぼ全員代わっている。

『ちびまる子ちゃん』もすでに多くの声優が交代しており、視聴者も交代慣れしているはずだが、それでも初回から34年間演じてきた主人公・まる子の声優が交代するというのは、とてつもなくインパクトの大きいことである。

『ちびまる子ちゃん』声優交代、松本人志不在のピンチヒッター…「代役・交代」をエンタメ化して消費してきたテレビ番組が直面する課題_4
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しかし、そんな強いプレッシャーがかかることが見えている中、2代目まる子を引き受けた菊池こころさんを全面的に応援したいと思う。

当然、菊池さんの声は、TARAKOさんと全く同じではない。本人も「しばらくは耳慣れないと思いますが、温かく見守って」というように、違和感はゼロではないかもしれない。

だが、TARAKOさんの功績を称える気持ちがあるならば、2代目のチャレンジもまた称えるべきだ。TARAKOさんは素晴らしかった。彼女はまる子そのものだった。しかし菊池さんは菊池さんなりの方法でまる子になろうとしている。それだけで素晴らしいと思う。

先ほど書いたように交代や代役は、ある種エンタメ化している。
しかし、いくらエンタメ化していても、視聴者はその交代劇をさくっと消費して終わりにすべきではない。

交代の回だけ「なんぼのもんじゃい」的な態度で見て文句を言い、その後は見ないような視聴者のコメントなんて、ネットニュースをはじめメディアは取り上げるべきではないだろう。

本当にその番組を大切に思っている人なら、交代した後も番組の魅力が維持できるよう頑張る人たちのことをきっと応援するはずだから。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太