公務員になるには「軍隊入隊」が近道?
昨年、中国都市部での軍隊への入隊希望者は、その8割が大卒者だと報道された。中には名門の精華大学や北京大学の卒業者も軍へ入隊するという。この背景にも若者の就職難があるのだろうか。
「軍に入隊するのは、留学はしてないけど、そこそこいい大学を出た中流家庭の子どもが多いんだよ。そうした連中は公務員を目指すことが多いんだけど、中国は公務員の採用はコネとカネが物を言う世界だから、学歴だけではどうにもならない。そこで、一時的に軍隊に入るんだ。
中国は水害が多いし、災害派遣される軍人もけっこう大怪我したり、死んだりする。だから軍人はすっごい感謝される。例えば、2年間軍隊にいて『3回、災害派遣行きました!』というのは、公務員試験的にはかなりのプラス材料になる。つまり軍隊に入れば、コネとカネがなくても評価されるんだ。
そして『うちの息子は軍隊で災害派遣に行ってます!』というのは親的にも、かなりメンツが立つんだよ」
ちなみに、中国の田舎だと日本で言うヤンキーみたいな連中が、親から強制的に軍隊に入れられることが多い。軍隊は厳しいからみんな更正するし、『グレてた息子が軍隊に入って、こんなに更正しました!』というエピソードトークも親的にもメンツが立つんだ」
昨今、日本で報道されるのは、おもに中国都市部での就職難だが、中国の田舎の就職事情はどうなっているのだろうか。
「オレの実家は中国の南、広東省の田舎なんだけど、実家も友達もみんな工場経営をやってる。だから、高校や大学を出たら家業の工場を継ぐのが基本。で、その工場で働くのがさらに田舎から出稼ぎにきた若者なんだ。彼らは学歴もお金もない人だけど、チャンスは都会よりもこっちのほうが大きい。
給料は都会の半分ぐらいだけど、住む場所も朝昼の食事もタダ。で、仕事のできるやつはどんどん出世して、最終的には新しい工場を任される。そしてその後は工場の社長の養子になるんだ。
中国では家族が増えるのは賑やかで楽しいと歓迎されるし、増えた家族が村の有力者と結婚すればカネとコネが生まれて、ビジネスも大きくなるからメリットしかないんだよね。だから、オレの田舎だと『こいつ新しい家族だから、よろしくな!』っていうのは“お正月あるある”だよ」