MTVの登場で表現の場をビデオに移行したが…
ヒプノシスが生み出すアルバムジャケットには、時代の空気、ミュージシャンたちの音楽、そして純粋な作品としてのアートが結実していく。
「レコードの売り上げのためにアルバムジャケットを制作していたわけじゃない。何らかのアーティスティックなインパクトを考えて作ったのであって、マーケティングとかイメージ戦略とかそういうことじゃなかった。僕たちはミュージシャンが音楽を作るのと同じくらい、真摯な姿勢でジャケットをデザインしてきた。だから人々が長いこと僕たちの作ったイメージを楽しんでくれるのはとても嬉しい」(ストーム・トーガソン)
1978年には、アシスタントだったピーター・クリストファーソンが対等パートナーとなり3人体制となったヒプノシス。
そんな彼らに転機が訪れたのは80年代。MTVの登場だった。やり遂げた感があったという彼らは1983年に解散。
そして表現の場をビデオに移行するため、映像制作会社グリーンバック・フィルムズを起こすも、あえなく倒産。ストームはデザイン制作、オーブリーは映画制作、ピーターはビデオディレクターや音楽制作と別々の道を歩んでいった。
デザイン仕事を再開したストーム・トーガソンは、90年代以降もピンク・フロイドのほか、オーディオスレイヴ、マーズ・ヴォルタ、ミューズなどの新世代バンドのヴィジュアル世界を創造した。2013年4月18日に死去(享年69歳)。