中高一貫率は?
我々のアンケートでは高校受験をしなかった人は100人中54人いるので、54%が中高一貫校に通っていたといえそうです。「中高一貫校に通っていましたか?」とは直接質問していませんが、別の質問で「高校受験をしましたか?」と聞いているため、ここから中高一貫校に通っている人の割合を割り出しました。
もちろん、中高一貫校に通っていても高校受験をする人はいますし、高校に行かずに高等学校卒業程度認定資格をとって大学受験に臨むケースも考えられるので、54%は厳密な数値とは言えません。
ただし、特に後者のような高校に行かずに東大を目指す人の数は大変少ないことが予測される(実際に高認をとって東大に来た人が知り合いにいるので、少なくとも何人かはいます)ので、54%と考えて問題はないと思います。
中高一貫校に通うメリットは様々ありますが、教育プログラムが一貫していることが、一番の利点と言えるでしょう。中学校から高校まで通う生徒が大半であるため、カリキュラムを高校までの6年間で組むことができます。
早い学校では、高校1年生時点で3年生までのカリキュラムの大半を終えており、こうした学校に通っている人たちは、実に2年近くを受験に向けた演習に費やすことができます。そうでなくとも、多くの中高一貫校では高校2年生時点で3年生までのカリキュラムを終えることを目標にしているため、普通の高校生よりも多く演習を積む機会が得られます。
学習はインプットのみならず、アウトプットによっても成り立つものですが、その機会を授業中に得られることは、多くの受験生にとって良い方向に働きます。そのため、中高一貫校は大学受験に非常に強い傾向があります。
また、高校進学が内部進学としてスムーズに行われるため、生徒たちは新たな環境に一から慣れていく必要がありません。周りにいる友達も、教えてくれる先生も、中学校時代と何ら変わりないケースが多いので、新たな環境に適応する努力が必要ないのです。そのため、生徒たちはそのリソースのうちの多くを自学自習に費やすことができます。新たな友達作りなど、人間関係構築に時間を割かなくてよくなるためです。
さらに、クラスメートや先生と長期的な関係を築けるため、その分だけクラスの結束も強まります。学習環境に絞ってみても、お互いに苦手な科目を教え合ったり、休み時間にクイズを出し合ったりと、切磋琢磨することができるようになるので、結束が強まることは、成績の向上につながる可能性があります。
先生方からしてみても、6年間同じ生徒と付き合うことになるので、ひとりひとりの学習スタイルや癖を把握しやすくなります。そのため、効果的なサポートが望めます。
一方で、中高一貫校に通うデメリットがあることも確かです。例えば、高校の進学先が狭まることが挙げられます。中高一貫校に通う学生の多くは、基本的にそのまま高校へ進学するので、ほかの学校を受験する選択肢が見えにくくなります。
ほかの学校や教育機関で受けられる教育カリキュラムを知らずに育つ可能性が高く、一時的に視野が狭まるかもしれません。また、受験を決意しても、周りの人にはなかなか言えませんから、仮に高校受験をする場合でも、必要以上に孤独を感じてしまう可能性があります。
また、一貫校の良さである一貫したカリキュラムや、同じ顔触れのクラスメートたちですが、これらに共感できない場合、6年間の学校生活が苦痛に感じられるかもしれません。そうした場合でも、一貫校特有の暗黙の了解である「みんなこのまま高校まで進学するよね」という空気を否定できず、なかなか高校受験に踏み切れなくなる場合があります。
さらに、同じ生徒や先生たちが顔を突き合わせ続ける一貫校は、受験戦争に強いのは確かですが、その代価として多様性を失っています。異なるバックグラウンドや視点を持った新たな友人を求める場合、高校入学時の人員入れ替わりが少ないため、別のコミュニティに入って探さなくてはいけません。
図/書籍『東大合格はいくらで買えるか?』より
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