ノミやハンマー、ジャッキまで使って石を落とそうと…
「ゴトゴト石」は高知市中心部から車で40分ほどの土佐山桑尾地区にある。車1台しか通れない道をしばらく進むと、しめ縄を巻かれた巨石が林の中に鎮座しており「不思議な石」「受験生の聖地」として、これまでに新聞やテレビで紹介され、過疎化が進む人口880人あまりの同地区の観光名所として親しまれていた。高知市土佐山桑尾の佐藤嘉一地区長は言う。
「石は重さ6トンと言われていて、それがどういう仕組みで下に落ちることなくゴトゴトと動いていたのかはわからないが、私の親父が若い頃から毎年、新年に向けてしめ縄を新品に交換して大事にしてきたんです。地区の古株ですらその起源は定かではないこの行事ですが、しめ縄をみんなで手作りすることで大事に保存していく意識を共有してきた。それを、どこの者とも知らない若者たちに乱暴に扱われ、動かなくされたんです」
“事件”が起きたのは2022年11月26日のことだった。
「関東の大学に通う6人の学生が『ゴトゴト石を俺たちで落としてやろう』と企て、東京でレンタカーを借りてその日の晩に現地に到着したようです。一旦は素手で押したものの全く落ちる気配がなく、ノミやハンマーを購入して使ったり、翌27日はジャッキを購入し持ち上げようにもジャッキが壊れたところで諦めたようです。結局は石が90度ほど水平方向に回転した状態で諦めて帰ったといいます」(地元メディア関係者)
第一発見者は観光客だった。高知市役所農林水産部の担当者は言う。
「大学生たちが帰った後の翌28日に現地を訪れた男性の観光客の方から『石が動かない』とこちらに通報がありました。それで職員が確認したところ、周辺に工具や軍手が散乱していたのを発見したようです。その後、市役所の横の駐在所に職員が相談し、高知東警察署にも相談をしたのですが…」
地元住民が大切にしてきた“石”への冒涜… 前出の佐藤区長は「腹の底が煮え繰り返る思いだ」と語る。
「警察や弁護士に相談しましたが、『自然石を割ったわけではなく動かしただけで罪に問えるか』と言われ、埒があかなかった。自分一人では限界があると、昨年春先に親しい者同士5人で告訴委員会を結成しました。同時に告訴を支持する住民ら500人分の署名集めにも奔走しました。この地区の14集落の皆さんに手渡しで配って回り、石のある山林を所有する神社が、2023年6月に高知東警察署に刑事告訴をしたところ、昨年末に高知地検が『観光資源となっていた巨石を固定させて使用不能にした』として学生6人に対して、器物損壊罪で略式起訴を下しました」