――かなり悲観的な見方ですね。社会がより階層化され、学生が負債の奴隷となることで「社会が封建主義的になる可能性がある」と述べました。あなたは、世界が無極化し、あるいは分断されているとおっしゃっていますが、将来を見据えた場合、異なるイデオロギーや価値観を持つブロックを橋渡しする、普遍的な価値が生まれてくる可能性はあると思いますか。
これが、私の姿勢のパラドックスだと思います。繰り返しになりますが、私は西洋人です。このように悲観的になるのは、西洋人として話しているときであって、単に自分の国だけでなく「自分の世界」のことを心配しているのです。
しかし、世界で起きていることに目を向けると、私は悲観的ではありません。
たとえば、ウクライナでロシアが勝利し、ウクライナの一部がロシアの主張する条件で割譲される可能性が高まっています。しかし、それがヨーロッパに政治的・軍事的な不安定化をもたらすとはまったく思いません。ロシアが、ヨーロッパの他の地域を攻撃する意図を持っていないわけではないでしょうが、人口的にも物質的にもその可能性はありません。
先進国はすべて、人口構造の不均衡、子どもが増えないという理由から、ある意味で弱い国だということを理解しなければなりません。ロシアの出生率は約1.5で、アメリカ、イギリス、ドイツ、北欧諸国の出生率は約1.6です。日本はもっと低くて約1.3だと思います。中国は約1.2です。
ある意味、先進国のシステムはすべて弱いのです。第一次世界大戦のときのように、国中から大勢の人々やエネルギーが集まっていた時代とは違うのです。
先進国では老人が増え、子どもは増えない。だから、あのような大規模に拡大するような戦争は、考えられないことなんです。これは、もちろんヨーロッパにも当てはまります。
ヨーロッパにおいて、アメリカの強迫観念となっているのは、ドイツとロシアが協力を構築することです。ウクライナにおける、アメリカの行動の主要な目的の一つは、ドイツとロシアの間に混乱と不和と対立を生み出すことでした。アメリカの目論見は見事に成功しましたが、戦争が終われば、必然的にドイツとロシアが互いに接近するときが来ます。
それは、ドイツとロシア双方の利益になるからです。そして、この二つの国のいずれも軍事的に、攻撃的になる可能性はありません。
しかし、こういった事態は世界の他の国々にも当てはまります。アジアにも当てはまると思います。中国の人口バランスが崩れているならば、中国の膨張は起こらないということです。