「今じゃあんな番組はつくれない」
それゆえに放送事故も少なくなかった。語り継がれるのが1983年12月1日に起きた“素人乱入事件”だ。突如ひとりの男性がステージに上がり、ゲストの席に座ってスタッフにつまみ出された珍事を永峰氏はこう振り返る。
「あの日は僕も現場にいましたが、慌てて出ていった記憶はなんとなくある。ほかにも靴だか飲み物だかを舞台上に投げ込もうとしている人をギリギリ取り押さえたことも何回もありました。
でもそういうハプニングはなるべく活かすのがモットー。お友達紹介で間違えて一般人に間違い電話をしちゃったときは、番組終了後にオファーして翌日本当に生放送に出演してもらって、『昨日はすみませんでした』って公開謝罪をしたこともあったし、遅刻して自分のコーナーに出られなかった所ジョージさんのマネージャーが、お詫びでその場で髪を切られたこともあったね」
また「いいとも!」には、アーティストやハリウッドスターも多数出演した。
「印象に残ってるのはダスティン・ホフマンですね。彼を迎えに帝国ホテルまで行って、我々スタッフはミニバンに乗ってダスティンが乗るハイヤーを先導したんだけど、日比谷の交差点で急にダスティンがこちらのミニバンに乗ってきて、車窓から指差しながら『あれはなんだ?』といろいろ質問してきましたね。マスコミ嫌いで知られてましたが、自由人で楽しむ心を持ってるんだなと思いました」
永峰氏は現在、ワタナベエンターテイメントのライブ監修を行っているという。
「新宿の小さい箱でライブした帰りなんかにアルタの近くを通ると、『タモさんと番組終わりに鰻屋行ったなー』とかいろんな思い出がよみがえってきて感慨深いです。
もう今じゃあんな番組はつくれないから、アルタを見上げるたびに『昔はよかったな~』なんてしみじみ思ったりしますよ」
「明日も見てくれるかな!?」「いいとも!」――。お決まりのコール&レスポンスを聞かなくなって10年。たくさんの思い出が詰まった新宿アルタも、閉館へのカウントダウンが始まった。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班