閉店後は温泉に入ってラーメンを食べて3000円の遊び場を
営業終了の原因となった今回の道路拡張についてはコロナ禍に決定が下され、拡張後の敷地だと製麺所がなくなり、駐車場は4台のみになってしまうそうだ。それでも店を続けようと模索したが、5年10年先のことを考えると厳しいという判断になった。
店主の早坂さんは東北初の日本ラーメン協会の理事を務めたほか、長年の食への貢献が認められ、2021年11月には「東久邇宮文化褒章」を受賞した人物である。ラーメン業界で慢性的に人材不足が続く中で、今の従業員に働き続けてもらう将来を考えると、それぞれが独立してもらったほうがいいというのが、早坂さんの結論だった。
「とにかく今は働き手がいません。そうなると、合理化していく道しかないのですが、うちは合理化とはかけ離れたやり方をしてきました。今はお客さんの数も制限し、お店に入れない待ちのお客さんには駐車場の車で待ってもらっている状態です。そんなやり方で少ないスタッフでギリギリ回してきました。もともと、この辺でそろそろ将来を考えないと、とは思っていたんですよね」(早坂さん、以下同)
「五福星」はもともと奥さんのてる子さんと二人で始めたお店。ここまで伸ばしてきたが、最初の状態に戻ろうという話になり、「解散」という道を選んだ。解散後の展開については、早坂さんには野望がある。「温泉地の小さなラーメン店」として再出発しようというのだ。
「これから、さらに格差社会が広がっていく中で、一般の人たちが誰でも楽しめる遊び場を作ろうと動き始めています。温泉に入ってラーメンを食べて3000円、みたいな、そんな誰でも楽しめる遊び場を作りたいなと」
「1000円の壁」に代表するラーメンの価格がなかなか上げられない問題や、原材料・水道光熱費の高騰、さらには人件費の問題など、日本のラーメン店はさまざまな課題を抱えている。その中で、勢いのあるお店はつぎつぎと海外進出し、活動の場を移しつつある。ただ、店主の年齢が高い個人店においてはなかなかそこには踏み出せないのが現状だ。
「みんな海外に行ってしまうのは楽しくない。今40~50代の店主が10年先に生きる道を作れたらなと思って、温泉地での展開を始めたいと思っているんです」