LUNA SEAにあって、西川のバンドになかったもの
当時、西川はLuis-Maryに対して、他メンバーとのモチベーションの差を感じており、一方でLUNA SEAはメンバー5人全員が高いモチベーションでぶつりかりあって切磋琢磨していたことから、「それぞれのテンションがぶつかりあってよさが生まれていた。そういうのが一番いいと思っていた。でもウチのバンドにはそれが全然なかった」と説明した。
結局、Luis-Maryは1993年に、西川が口火を切って解散。理由は音楽性の違いと公表されていたが、本人にとってはすっかり黒歴史扱いとなってしまったのかもしれない。
この辺りの詳しい経緯や西川の心境について、ファン歴28年、ラジオの有名ハガキ職人で、西川本人と面識もあるマンジーさんに話をうかがった。
「学生時代の西川さんの夢は、バンドで大成すること。インディーズ時代のLuis-Maryは関西では敵なしのバンドになっていたものの、上京してメジャーデビューしてからは売れなかった。絶対にバンドで売れてビッグになりたいと向上心溢れる西川さんは、現状に満足している他メンバーを見て脱退を決意し、結局バンドは解散になりました。
その後、1996年に『T.M.Revolution』としてブレイクしたものの、西川さんは心の中で ずっと『バンドで大成したかった。バンドで大成することができなかった』という思いを引きずっていたため、Luis-Maryについては触れてほしくない黒歴史となったのです」
しかし、本当の意味で黒歴史だったのは2005年頃までとも、マンジーさんは話す。
「2005年に西川さんが結成したバンド『abingdon boys school』が結果を出したことで、Luis-Maryが黒歴史だという思いが薄れていったのでしょう。今では、当時を知るバンド仲間や先輩方にLuis-Maryについてイジられることに関して、西川さん的には恥ずかしいけど、うれしい気持ちもあると思いますよ。
西川さんの大袈裟なリアクションは、“黒歴史イジり”に乗っかって楽しんでいる感じだと思います。それに、Luis-Maryがあったから、今の西川貴教があると僕は思っています」
現に、西川はLuis-Mary時代の名前「灰猫(HAINE)」をそのまま引用したアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場するキャラの声優を務めたりと、その黒歴史を今の活動に繋げている。
『X JAPAN』のYOSHIKIが、大ブレイクする前は「ゲイリーヨシキ」と名乗ってバラエティー番組でイジられていたりといった、さまざまな過去がミュージシャンにはあるものだ。けれど、それはやがて誇らしく、愛せるものへと変わっていくこともある。黒歴史を抱える者としてはうらやましいものだ。
取材・文/集英社オンライン編集部