台湾では知らぬ者のない伝統芸能「布袋劇」

今回、台湾が世界に誇る伝統芸能「布袋劇(ほていげき)」の世界に案内してくれたのは、台湾在住の西本有里さん。台湾の布袋劇最大手・霹靂(PILI)社で、日台コラボシリーズ『Thunderbolt Fantasy 東離剣遊紀』のプロデューサーを務めています。

西川貴教、花江夏樹も参加し、台湾で「最も熱いアニメ」と評価。日台コラボ特撮人形劇の舞台裏_1
東宝株式会社での勤務を経て、台湾へ移住。香港や台湾合作映画の通訳を務めつつ2013年より霹靂社で日台合同企画シリーズ『Thunderbolt Fantasy 東離剣遊紀』のプロデューサーとして、日本をはじめ世界各地を駆け回る
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布袋劇とは、木彫りの人形に人形師が手を入れて操作する、昔ながらの人形劇のこと。17世紀に中国大陸の福建省で誕生した後に台湾へ伝わったといわれ、廟(びょう)の前で神様に向けて演じ、大衆がそれを観劇するという形で、ストーリーなども次第に現地化されながら広まっていきました。テレビのなかった時代、布袋劇は人々にとって貴重な娯楽でした。

特徴的なのは、ストーリーが武侠(武術に長け人情に厚い人間たちが織りなすドラマ)であることと、言語が台湾で古くから使われてきた「台湾語(ホーロー語)」であること。私は台湾で使われている中国語「台湾華語」しか話すことができないので、昔ながらの布袋劇を観てもぼんやりと理解することしかできませんが、台湾では今でも世代を超えて親しまれているんです。

西本さんが勤める霹靂社は30年以上も前から布袋劇の制作・配給を手がけており、特に大迫力でド派手な“特撮方式”で制作した「霹靂布袋劇シリーズ」で大成功を納めています。60分程度のエピソードを週に二話制作し、テレビ放送のほか、DVDが台湾中のコンビニで販売されていますが、一話あたり3万本は売れているというから驚きです。

「霹靂社には人形師だけで40人ほどが在籍し、朝8時から夜中の午前1時半まで六班体制で撮影するというのを長く続けているんですよ」と西本さん。

特撮の「霹靂布袋劇」を作り続ける一方、同社では、現代化や国際化を視野に入れて新たな可能性を模索しています。今話題のNFTにも挑戦し、すでに高評価を得ているそう。