頭に「もや」がかかった感じ
私が相談を受ける人のほとんどは、疲れのほかにもさまざまな症状を抱えている。その人たちが疲れ切って夢も希望もなくしているのは、そうした健康問題のせいである場合が多い。
私が感染性単核球症のせいで疲れ果てていたのはもう数十年前だが、そのときの絶望と不安はいまでもはっきり思い出せる。
そんな不安を感じていたのは、疲れの本当の原因にたどりつけなかったからだけでなく、1粒で効く特効薬や、それさえ手に入ればすべてを解決してくれる「聖杯」のような秘宝が存在しないとわかっていたからだ。
そして、脳の健康が損なわれたときに何よりも恐ろしいのは、自分ではそのことに気づけない点だ。思考がはっきりしなくなり、普通なら何も考えずにこなせる簡単な仕事さえだんだんできなくなって、ぼんやりしてしまう。気分もつねに不安定で、イライラしたり、不安になったり、落ちこんだりを繰り返す。
脳はあなたの生活の中心にあって、すべてを采配する役割を担っている。あらゆる体の働きを制御する指令を出し、呼吸から思考、感情にいたるすべてを決定する。
だから、脳が期待どおりに働かないと、健康に重大な問題が起きるだけでなく、エネルギーも湧いてこないのだ。
激しい慢性疲労を抱える人たちには、次のような脳にかかわる症状が出ることが多い。
・脳疲労(仕事、読書、勉強、車の運転などの精神的に疲れる作業をしたあとに、脳のスイッチが切れたように激しい疲れを覚えたり、眠くなったりする感じ)
・頭にもやがかかったような感じ(記憶力や集中力の低下、精神的な明晰さの喪失、考えがまとまらない、考えるのに時間がかかる、1つのことを考えられないといった認知機能の衰え)
・回復力の衰え(ストレスに弱くなったり、すぐ調子を崩したり、ちょっとした精神的・身体的ストレスに大きな打撃を受けたりする)
・うつや不安
・線維筋痛症や偏頭痛
・心理的疾患や精神的疾患
こうした症状は、実際はすべてが深く絡み合っている。
それほど疲れ果てているというわけではない人も、何かしら脳にかかわる症状を抱えていることが多い。
なぜか? それは、こうしたさまざまな症状と疲れは、脳の細胞レベルで結びついているからだ。