ミトコンドリアと「ニューロン」の密な連携
脳はとても複雑な働きをする器官だ。その脳に体をきちんと機能させる力を与える最も大切な要素が、「ニューロン」と「神経伝達物質」だ。
ニューロンは情報の伝達機関で、脳という都市のなかにある建物とも言える。信号を生み出し、体のなかで起きていること──あるいは起きる必要があること──を脳と神経系に伝える基地としての役割を果たしている。
神経伝達物質は、ニューロンからの信号と情報を脳と神経系に運ぶ化学物質だ。ニューロンの建物が伝えたいメッセージをつくり出すと、神経伝達物質がメッセンジャーとしてそのメッセージをあちこちの建物へ送り届ける。
脳の機能を最大限に発揮させ、健康でエネルギーみなぎる体をつくるには、ニューロンと神経伝達物質──信号とその滞りない伝達──の両者が欠かせない。ニューロンが損傷を受けて機能不全になったり、神経伝達物質のバランスが乱れたりすると、脳はエネルギーをつくるための正しい信号を出せなくなる。
脳の構造や機能に広範囲にわたる変化が起きれば、必ず慢性疲労に結びつく。慢性的にエネルギーが湧かずに苦しんでいるなら、少なくとも部分的にせよ、脳の健康に問題があることを疑ったほうがいい。
慢性疲労に苦しむ患者を調べた55件の研究を体系的に分析したところ、慢性疲労のない人と比べて、脳の構造と機能に次のような変化が起きていたことがわかった。
・自律神経系の活動の乱れ
・脳の白質量の低下および脳の縮小
・脳の各領域間の機能的なつながりの不調
・認知機能と記憶の衰え
・脳の血流と栄養素の搬送の減少
・うつや不安の傾向
脳の健康が悪化し気分に乱れが起きる最大の理由は、ミトコンドリアの機能不全だ。
脳には、ニューロンが適切に起動し、神経伝達物質がつくられるのに欠かせないミトコンドリアが豊富にあり、それらが生み出すエネルギーを原動力として脳は活発に働くことができる。
脳の全体重に占める比重はわずか2%だが、安静時には体内の酸素の20%を消費しているのだ。
ミトコンドリアの機能不全は慢性疲労の根本的な原因だが、それだけでなく、神経炎症や認知能力の衰え、神経変性(このすべてが疲労につながるもの)を引き起こすのもミトコンドリアの機能不全なのだ。
文/アリ・ウィッテン アレックス・リーフ
写真/shutterstock
私たちの体が「疲れを感じる」理由を知っていますか
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