休憩をとったと虚偽報告

前出の副都心主管のセンターに勤める男性も、「ベース店(大型店)への移転が決まったセンターのドライバーはどんどん辞めていった」と嘆く。

「副都心主管はおもに新宿区を担当していますが、集約化で大井町のほうにあるベース店に吸収されることになり、通勤に1時間以上かかるようになりました。なんで新宿区を担当するのに湾岸エリアのベース店に集約するのか意味不明です」

本社が推し進める「ドライバーの分業制」と「センターの集約化」は裏目に出ている感が否めないが、最大の問題は利益優先の効率化が引き起こした人員不足だ。前出の東東京主管に勤める男性は声を荒げる。

都内の営業所(撮影/集英社オンライン 本文の内容とは関係ありません)
都内の営業所(撮影/集英社オンライン 本文の内容とは関係ありません)

「本社が人員削減に躍起になったため、人手不足で就業時間内に荷物を配達しきれてないのが現状。
本来の規則では1時間は休憩を取らなければいけないのに、事務所やトラックの中でご飯だけ食べてすぐに働く人がほとんど。

でも休憩をとっていないと上司から注意されるから、みんな仕方なく勤怠管理のタブレットに休憩をとったと虚偽報告してますよ。このことを上層部が知らないわけがないのに、何が2024年問題だよ!って感じです。

先行きの見えない会社への不安から、『昔は宇宙戦艦ヤマトだったけど、今は泥船だよ』と皮肉を言うベテラン社員もいましたね」

こうした現状についてヤマト本社に質問状を送ってみた。(質問概要は①~④の4点で〈 〉はヤマトの回答)

ヤマト運輸の本社が入っている西新橋1丁目ビル(撮影/集英社オンライン)
ヤマト運輸の本社が入っている西新橋1丁目ビル(撮影/集英社オンライン)

① CD(=クールドライバー)が発足してから間もない9月10月ごろは、時間指定順守率が10%ほどになっていたのは事実か?

〈立ち上げた当初、一部エリアでお客さまとお約束したお届け時間を守れていないことがあったことを確認しております。お客さまにはご迷惑とご心配をおかけしましたことをあらためてお詫び申し上げます〉

② クール便の配達において軒先に荷物を置くなど“配達トラブル”を本社は把握しているか? また、トラブルの原因としてエリア拡大やCDドライバー不足の声が現場からあがっている。配達時間を間に合ったことにするため現場の上司から端末機を操作する指示をだすエリアもある。本社は把握しているか?

〈現時点で、本社ではご質問内容を把握しておらず、指示を行った事実がないことも確認しておりますが、今後、万が一、確認できた場合は、厳正かつ適切に対処いたします〉

③ 品川区の低温配送センターで働く委託業者のなかには、自前の車でクール便を配達しているものもいる。これは本社からの指示か?

〈東京都品川区にある「低温輸配送センター 東京南エリア」は、東京都港区など一部エリアで保冷配送を行っており、そのなかでクール宅急便の品質を担保する形で、一部の運用を外部パートナーに委託しております〉

④ 配置転換により不馴れな社員がドライバーとなり退職者が相次いでいる、さらに忙しさから休業時間がとれないが、端末をいじり虚偽の休憩時間を申告している社員がいる。本社は把握しているか?

〈当社は、SDの役割・責任を明確化し、適所適材の配置を行うことで、適正な労働時間の管理、より働きやすい労働環境の構築、働きがいの向上に取り組んでおりますが、社員に関するご質問については、従来から回答を差し控えさせていただいております〉



大手宅配業者ではあるが、現場の声は残念ながら本社には届かないようだ。

※「集英社オンライン」では、宅配業者のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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