小泉今日子さんのあの名曲も
――音といえば、音大が舞台ということで、クラシックの楽曲も複数登場します。小泉今日子さんのあの名曲も。
音楽好きの方には、そういったポイントでも楽しんでいただきたいですね。それに実は今回、あの久石譲さんが本作のためにオリジナル楽曲を書き下ろしてくださったんですよ。映画ではスゴく良い場面で久石さんの音楽が流れるのですが......ノベライズではそれを聴かせられないのが本当に残念です。
久石さんには個人的な思い入れもあって。僕、映画監督になる前は、週プレ編集部でライターとして10年ほどお仕事させてもらっていた時期があるんです。25年くらい前かな? 大好きな久石さんに会いたい一心で企画書を作り、取材が実現したとき、「僕、映画監督を目指していて。いつか映画を作ったら、音楽を作ってください」とお話しさせていただいたんですよね。
――そ、そんな伏線が......!?
久石さんが日本の実写映画で楽曲を作られるのは珍しいこと。今回、ご快諾いただけるとは思ってもいませんでした。僕の発言はともかく、取材のことは覚えてくださっていたようです。だから、久石さんに楽曲を書いていただけたのは、週プレのおかげと言っても過言じゃない(笑)。来年の1月24日には、『サイレントラブ』のオリジナル・サウンドトラックも発売されます。ありがとう、週プレ!
――もちろん、内田さんの実績があってのことご快諾だと思いますが、聞いているこちらまでうれしくなるお話ですね。夢は口に出すものといいますか。
アハハ。この流れで"良い話"をさせていただくと、過去にも映画のノベライズを出させてもらっている中で、集英社から刊行するのは今作が初めてなんですよね。久石さんのこともありつつ、10年通っていた会社で映画監督としてお仕事ができるのは正直感慨深いです。って、少し話が逸れてしまった気がするけど......「サイレントラブ」、映画もノベライズも両方お楽しみいただけると幸いです。
取材・文/とり
内田英治(うちだ・えいじ)
1971年、ブラジル・リオデジャネイロ出身。1999年にドラマ『教習所物語』(TBS)に脚本家として参加。2004年に『ガチャポン』で初映画監督。第44回日本アカデミー賞で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞を獲得した映画『ミッドナイトスワン』(2021)やNetflix配信『全裸監督(シーズン1)』など、話題作を数多く手掛けている。映画監督になる前は、週プレ編集部の記者として著名人のインタビューを行なっていた経歴も。
『サイレントラブ』2023年12月20日発売(集英社文庫、638円【税込】)
青年・蒼が心惹かれたのは、目が不自由になり夢が途絶えかけている音大生の美夏。ある出来事をきっかけに声を発することをやめた蒼は、ピアニストになるという美夏の夢を叶えたいと願いながら、彼女とのかけがえのない時間を過ごすが――。静謐で美しい、「世界でいちばん静かなラブストーリー。山田涼介・浜辺美波が出演する注目映画を、「ミッドナイトスワン」の内田英治監督自ら小説化!