土屋プロデューサーがオーディションで猿岩石を選んだ理由

早速に「アジア編」から読んでみる。

冒頭に土屋プロデューサー(『電波少年シリーズ』のプロデューサー)の前書きがあるが、このオーディションで猿岩石が選ばれた理由は、「さして深い理由があったわけではない」ということに驚く。

「猿岩石というコンビ名の由来が2人の昔の彼女のあだ名を合わせたものだという話が面白いと感じた」という何となくの理由で彼らは半年スケジュールが空いていた約30組の芸人の中から選ばれたのだ。

人気低迷後、有吉が復活したきっかけが「あだ名芸」だったことを考えると、彼は「あだ名」に何度か救われたわけだ。

当時のアジアは今以上に混沌としていた時代。スタート地点の香港も返還前だし、中国の深センも今の最先端シティぶりからは考えられないほど治安が悪い街だ。

野宿と空腹とヒッチハイクの繰り返しで、どんどん過酷度が上がっていくのが彼らの筆致からもよくわかる。タイではよくわからぬ理由で留置所に入れられ、インドではわけもわからずついて行ったお寺で出家。一文無しになっては、善意の人に助けられ、住み込みで働いて交流を深める。

彼らは日本でどんどんこの企画の人気が上がっていることも、日記の内容がオンエアに乗っていることもまったく知らずに書いているので、とにかく内容がストレート。

やれクソむかつく奴がいただの、やれホテルのテレビが全部おもしろくないだの、やれお節介ババアのせいで無駄な体力を使っただの、オブラートゼロの日記が続く。だがそれがリアルだ。

紅白司会の有吉弘行。芸能界の泥水をすすりながら「日本芸能界のてっぺん」をとった有吉の「あだ名」に救われ続けた芸人人生_1

すでに日記でもふざけていた。有吉が持つ「ふざけ芸」の片鱗

本の構成としては上段に有吉、下段に森脇の日記があるのだが、森脇が比較的真面目に事実を小学生の作文のように書くのに対し、有吉はほぼ感情にまかせて書いている。悪ふざけや下ネタも圧倒的に有吉が多い。

そもそも有吉はSNSなどで今もずっとふざけているし、番組においても隙があればどんどんふざける。

「ふざけ芸」とでも言えばいいだろうか。

そう言うと小学生の延長みたいに聞こえるが、有吉はただふざけているだけではない。物凄い瞬発力と頭の回転の速さでそのふざけの着地点を瞬時に見つけていく。

ヒッチハイクは彼が21歳から22歳にかけての旅だったが、その文章にも何となく今につながる片鱗が見えるのだ。